安平町の少年野球チーム、追分イーグルスが追分地区内に農業用のビニールハウスで室内練習場を建てる。昨年9月に発生した胆振東部地震で専用のグラウンドが使えなくなるなど被害を受けた子どもたちに「野球を思う存分させてあげたい」と指導者や保護者らが考案。建設に掛かる一部費用をインターネットで資金調達するクラウドファンディングで補い、12月のオープンを目指して各方面への支援を呼び掛けていく。
追分イーグルスは発足30年を超える歴史を持つチームで現在、小学1~6年生の14人が在籍。野球だけではなく、地域の行事などにも参加し、住民との交流も積極的に行ってきた。
しかし昨年の震災後、小学校が立ち入り禁止区域になったため、主な練習場になっていた学校のグラウンドが使えない状態に。町内にある屋内スポーツセンターを利用してきたが、テニスなど他の団体の利用も多いことから時間が限られ、週4、5日できた練習は週に1、2日まで減った。また施設の破損にもつながることから打撃は野球のボールを使わず、テニスボールを使用。地震のショックや余震、野球ができない状況から次第に笑顔が消え、気持ちだけが落ち込む日々を過ごした。
そんな団員の様子から「1日でも早く子どもに笑顔を」「せめて大好きな野球はやらせてあげたい」と指導者、保護者らが模索し、専用の室内練習場を建てることを決意。追分公民館近くの土地を借りて幅8メートル、奥行30メートル、高さ3~4メートルほどを確保し、農業用ビニールハウスを建設する。本来のグラウンドの広さとはいかないが、子どもたちが冬でも土の上で思う存分にボールを投げ、バッティング練習をすることが可能になる。主将の山田陽那汰君(11)=追分小6年=は「時間を気にしないで練習ができる。(室内練習場で野球ボールを使って)シート打撃をしたい」と話す。
ただ、建設する資機材に最低でも200万円ほど掛かるとされ、ビニールハウスの組み立てなどは保護者らで行い、資機材の一部をクラウドファンディングで募る。目標額は80万円でプロジェクトは10月7日まで。寄付を受けた返礼品として復刻版ユニホームのレプリカTシャツなどを考えているという。
子どもたちの笑顔を取り戻すことで、町を元気にする―。町地域おこし協力隊・クラウドファンディング推進員の松岡亮さん(30)は「行事にも参加し、お祭りの手伝いなどもしてくれていた。地域で愛されている子どもたちが野球を通して、町を元気にしたいというすてきなプロジェクトだと思う」と話し、支援を続ける考え。事務局の恩田時隆さん(49)は「いまだ避難生活を強いられている人がいる中で不謹慎かもしれないが」と前置きした上で、「子どもたちに笑顔で元気に野球を続けてほしい。弱小チームだけれど、大会に出たり、活躍したりすることで皆さんに元気を与えられたら」と協力を呼び掛けていく。