長寿の幸せ

  • ニュース, 夕刊時評
  • 2019年9月16日

  超高齢社会の日本。自立して生活できる年数を表す健康寿命は、女性が74・79歳、男性が72・14歳(2016年時点)で、男女ともこの数字に10を足すと、ほぼ平均寿命になる。つまり10年は誰かに介護されて生きるということ。ピンピンコロリ(元気に長生きしてコロリと死ぬこと)を望んでも、実現は難しい。

  自宅で介護される身になれば介護疲れによる家族間の殺人や心中が、施設で介護される身になれば職員による虐待が心配になる。そうかといって自立して生活しても、視力や聞こえが悪いために地域で気まずい思いをしたり、高齢者をだまして甘い汁を吸おうとするやからに狙われたりで、心穏やかにはいかない。

  しかも高齢になるほど、「あの頃はこうだった」と一つ言えば全て通じる年の近い仲間や身内は減っていく。人生100年と言われるが、100歳にもなれば気の置けない相手が身近に1人でもいれば幸せというもの。周りにいる地域住民や施設職員は自分よりも若い人ばかり…という日々には、たとえどんなにお金があっても埋められない孤独があるのでは。

  長寿の人には「いつまでも長生きをしたい。幸せだから」とえびす顔で言ってほしいし、将来記者が長生きできたなら、やはり笑顔でそう言いたい。それには最期まで人間らしく、自分らしく暮らせる世の中でなければ。そう思った敬老の日。(林)

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