胆振東部地震でライフラインが断絶した厚真、安平、むかわ3町。大規模停電(ブラックアウト)に断水が追い打ちを掛けた。陸上自衛隊第7師団は地元自治体などの要請に基づき、発災初日の昨年9月6日から同10月5日まで給水支援を展開。総給水量は日高町の支援も含めると95万リットルに達した。
第72戦車連隊は安平町安平地区の給水を担当した。厚真町の人命救助を終えてから、第2師団(旭川)と交代する形で民生支援に入った。安平公民館付近に国土交通省の5トンの大型給水車が陣取る中、中塩毅2尉が指揮する小隊は1トンの水トレーラーで安平地区を巡回することになった。
「安平はお年寄りが多い地区。公民館まで足を運びづらい方もいる。場所を次々に移しながら給水した」。給水は朝、昼、夕の1日3回。毎朝水を満杯にして北恵庭を出発し、安平地区で巡回しながら水を配り、1日1~2回はタンクが空になって追分地区の浄水場で水を補給した。
ポリタンクや大きめのペットボトルなどを持って訪れる高齢者たちに対し、小隊の10人は一様に「重いので持ちます」「自宅まで運びますよ」などと優しく応じた。にこやかにあいさつし、世間話に積極的に応じた。水でいっぱいになった重たい容器を持ち運び、「みんな自発的にやってくれた」と強調する。
当初は安平駅前と消防支署、国道234号沿いの3カ所を巡回拠点にしていたが、徐々に「同じ所をぐるぐる回る感じ」で巡回を強化していった。隊員がハンドマイクを使って「給水に来ましたよ」などと呼び掛けて回り、必要に応じて随時水トレーラーを停車し、給水した。
重視したのは「ニーズに応えて、やれることはどんどんやる」との思い。地域住民に「困っていることはないか」「何かあればいつでも声を掛けて」と呼び掛けた結果、「(巡回場所まで足を運ぶのが)大変なので、容器を家の前に出して置いておけば、こちらで見つけて入れるようにした」。
1回の巡回で3時間ほどかかるきめ細かさ。「常に人が来る状態ではなかったので、負担になるようなことはなかった」と平然と振り返るが、毎朝午前7時ごろには安平地区に入り、給水は「1日3回」と言いつつも、夕暮れ時までびっしり作業した。
自身は安平町安平地区の出身。小学1年生まで住み、今でも墓参りは欠かさない。派遣先は偶然決まったが、被災直後の現地入りに「祖母が以前住んでいた家はぼろぼろで、神社のこま犬とかも倒れていてショックを受けた」と振り返る。
覚えてくれていた地域住民も多く、数多くの感謝に元気ももらった。今年も8月に墓参したが「地震の被害が残っていて『まだ終わっていない』という感じ。早く元に戻ってほしい」。7師団にとっても、自分にとっても、地元の復興を心から願う。