恵庭市柏陽中学校(森岡理惠校長)では、会議などで活発な意見交換を促す手法「ファシリテーション」を授業に取り入れている。生徒が自分の意見を述べる機会を増やすと同時に、相手の意見を理解し、受け止める能力を伸ばすことが目的。中学校での導入は全国的にも珍しく、関係各方面から注目されている。
ファシリテーションは、司会・進行役の「ファシリテーター」が出席者に質問し、会議内容を整理しながらリードすることで、有意義な会議をつくるテクニック。主に会社の会議などで用いられる。「資料を読み上げるだけ」「意見が上がらない」といった課題を解消し、参加者が発言するチャンスを平等につくる役割を持つ。
同校では、新指導要領に盛り込まれた「主体的で対話的な深い学び」を実践する手段として、2018年度から段階的に導入し、今年度から本格的に始動。基礎学力の定着に加え、社会で求められる思考力やコミュニケーション力を養うことが狙い。生徒のグループワークの中で「もっと深く教えて」「あなたなりのエピソードを教えて」などと、会話が深まるよう意識して発問することで、生徒同士が人間性を理解することにつながるという。同校教諭による研究部が先導し、先行事例の研究や研修を実施。学活をはじめ国語、美術、数学など複数の教科で活用している。
国語の授業では、マイクロプラスチックをテーマとした二つの新聞の社説を読み比べ、社説にある相違点と共通点を探し出すワークを実施。生徒は小グループに分かれて内容を吟味し、付せんに書き出した。
ファシリテーター役の生徒は「どうしてそう思ったの?」などと理由を聴き、情報を整理するなど有意義な意見交換になるよう働き掛け、生徒は自分で考え、考えを伝える力を鍛えた。自分たちになかった他のグループの考えを探し、参考にする場面も設け、自分とは異なる視点や意見を認め合う柔軟性も養った。
研究部長の岸本哲典教諭は「例えば数学の授業に取り入れることで、計算が苦手でも数学的思考の面白さに気付き、学習意欲が高まるケースもある。一見遠回りでも勉強に関心が持てると、学校の楽しさも増える」と語った。
森岡校長も「生徒の基礎学力だけでなく、自分の考えを深めて活用する力を育てたい」と強調。「ファシリテーションの導入以降、相手を認めるようになるなど変化が見え始めた」と手応えを語る。
10月には、生徒のファシリテーターを育成する研修を実施予定。生徒自身が考えを引き出す手法を身に付けることで、より主体的な学びを促す方針だ。