白老町で今月から本格的に展開される文化芸術事業「ウイマム文化芸術プロジェクト」(文化庁、実行委員会主催)の一環で、「白老の木彫り熊とその考察展」と題したイベントが仙台藩白老元陣屋資料館で開かれている。北海道土産を代表する民芸品として白老でも盛んに生産販売された木彫り熊に焦点を当て、文化的価値を伝えるイベントだ。23日まで。
会場には白老を中心に道内各地で制作された木彫り熊約140点を展示。「ほえ熊」「座り熊」「サケくわえ熊」などさまざまな種類を並べた。白老で作られ、熊の目に散弾銃の鉛弾を使った昭和初期の古い作品もある。白老の職人が制作に使用した彫刻刀やノミ、彫り師や家族からの聞き取り記録や写真など隆盛期の往時を振り返り、伝える資料も紹介している。
白老での木彫り熊の生産販売は戦時中の衰退期を経て、戦後の高度成長時代に飛躍的に発展。観光ブームの1960年代から70年代にかけて町内に木彫り熊を扱う民芸品店が軒を連ね、彫り師ら多くの職人が活躍した。
地域資源を活用した作品展示など文化芸術事業を企画する同プロジェクトは、かつて観光客から人気を呼んだ木彫り熊に着目。白老の地域文化資源として見直すイベントを企画し、7日にスタートさせた。
会場に足を運んだ札幌市の会社員東海林広尚さん(43)は「毛並みを表現する技術がすごい作品もあり、もっと木彫り熊の芸術性が見直されてもいいと思う」と話し、興味深げに作品を眺めていた。調査や資料収集に当たったスタッフは「木彫り熊は文化財的な地域資源。その価値を知ってほしい」と来場を呼び掛けている。
期間中の開催時間は午前9時半~午後4時半。17日は休館。入場料は300円(小・中学生は150円)。白老町民は無料(氏名、住所が分かる物を持参)。問い合わせは同資料館 電話0144(85)2666。
同プロジェクトの事業はこの他、マレーシアの現代アート作家ヨンチア・チャンさんの展覧会(喫茶休養林、14日まで)、影絵作家川村亘平斎さんの作品展(ハクホステル、23日まで)を実施。アイヌ語地名が残る土地を訪ねるフィールドワーク「アースダイブ白老・幌別」(10月5日、14日)、白老小学校に芸術家がアトリエを設けて児童と交流する「アーティスト・イン・スクール」(10~11月)なども予定している。