再生と新生

  • ニュース, 夕刊時評
  • 2019年9月6日

 収穫の時が近い。

 思い出すのは田んぼの周りに残る匂い。野の草を一握りむしり取ると手に残る青っぽい匂いに似る。稲は、穂の先が黄金色に染まって重たそうに垂れても、支えている茎はしっかりしている。だからコンバインで刈り取られたばかりの田んぼは新鮮な香りをまとう。コラム子はその匂いが大好きだ。

 稲は収穫期でも、ちょっとやそっとの風が吹いたくらいでは大概、簡単には倒れない。台風のようなよほど強い風雨にさらされたり、つむじみたいな風が暴れたり、大事な時期にあまりに日の光が少な過ぎたり、計算が違って肥料が多過ぎたりしなければ、頑張る。膨大な思考錯誤の交配と栽培が繰り返され、時代を超えた気の遠くなる時間と挑戦を重ねて今がある。

 掛け替えのない存在や積み上げてきた人生の証しを失い、暮らしの前提が崩れ、その現実に向き合って生きる人が近くにいる。失ったものの大きさを声高に語らず穏やかに笑みを見せて、今できることに淡々と向き合う。恨み憎む相手のいない冷害や干ばつ、水害にも歩み続けた。こうべを垂れてなお風にたおやかな稲穂のように。その境地にコラム子は至れない。

 胆振東部地震から1年。復興の灯は人々のいちずな心に源がある。暮らしと生き方には再生も新生もある。誰もが光を感じ、皆が生き続けられるまちづくりはお仕着せとは別の、人々の声とつながりを柱にした営みにこそある。(司)

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