(2) 商店街 復興思い支え合う

  • 特集, 胆振東部地震 未来を見据え
  • 2019年9月3日
厚真町の仮設店舗で笑顔を見せる北條さん(後列右)

  「何にしようかしら」

   「野菜たっぷりの料理がお薦めかな」

   厚真町京町の仮設店舗「Shijima Yoga Studio&Cafe(シジマヨガスタジオアンドカフェ)」。店内では、店主の北條佳苗さん(42)と3人の女性客が和やかな雰囲気で会話を楽しんでいた。そんな何気ない日常風景を取り戻せたのは、最近のことだ。

   北條さんは苫小牧市出身。厚真町の自然に魅了され、2006年にパートナーの男性と移住した。幌内地区の約5000平方メートルの畑でトマトやインゲンなどを育てながら、「トータルで体や心がリラックスできる場所をつくりたい」と、16年に一軒家を使ってヨガスタジオとカフェをオープン。インド式のヨガや季節の無添加野菜をふんだんに使った料理が町外客からも人気を集めたが、胆振東部地震で店舗が半壊、自宅は全壊した。

   順調だった暮らしが一変したことで「最初の1カ月感は何も考えられなかった」と北條さん。家族や友人の支援を受け、19年6月に仮設店舗で営業を再開。「たくさんの方々に支えてもらい、きょうを楽しく頑張って生きている」と感謝の思いを語った。

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   地震は地域の経済に深刻な影響を与えた。東胆振3町の商工会などによると震災に起因する廃業は合計で10社。高齢化などを背景にした廃業も少なくとも8社に上り、まちの活力を促す商業再生は大きな課題だ。

   厚真町では建物が被災した4事業者が京町の仮設店舗に入居中。商工会の金子洋巳事務局長は「本格復興はこれから。風化の心配もあり、若手経営者の育成や後継者不足への対応が必要」と話す。

   安平町は人口減で買い物需要が落ち込んでおり、商店街と町が21年度の運用開始を目指して早来、追分の両地区で使える共通ポイントの発行を検討中。むかわ町は鵡川地区の中心商店街で全壊や半壊の商店は解体工事後に建て替えの見通しがなく、更地が点在。同町商工会では会員の減少傾向が震災で加速。会員からは、人口減や後継者不足など町の未来に対する不安の声も目立つ。

   こうした現実にそれぞれの町の商店主らは、どう対応していくかで懸命に知恵を出し合っている。むかわ町では3月に商店主や漁業者、金融機関職員などの有志が集まり「むかわ町の商業の在り方を考える会」(仮称)を設立。意見をまとめて町に伝える方針だ。

   町内美幸のシシャモ専門店カネダイ大野商店の大野秀貴社長(45)は「人を呼び込むため商店街にある更地の活用を検討中。お金も人もないが、活気ある商店街づくりを目指して町と話し合っていきたい」と力を込めた。

  (胆振東部地震取材班)

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