タイの保健省、各県の保健局関係者12人が8月29日、恵庭市を訪れ、福祉施設を視察したほか、市の職員から介護医療施策について説明を受けた。コンケン県のソムチャイチョート・ピヤワットウィーラー保健局長は「介護予防など、タイでも実践可能だと感じた」と話していた。
今回の来市は、国際協力機構(JICA)の招聘(しょうへい)事業「高齢者のための地域包括ケアサービス開発プロジェクト」の一環で実現。一行は25日に来日し、28日までに道の取り組みを視察したほか、札幌市内の病院なども訪れており、31日に帰国した。
恵庭では、柏木町にある特別養護老人ホーム恵望園を訪問。職員から「いきいき100歳体操」など介護予防についての取り組みや医療、介護などを結び付ける地域包括支援センターの役割について説明を受けた。施設利用者と一緒に実際に同体操に取り組み、楽しいひとときも過ごした。
午後からは恵庭市役所を訪ね、保健福祉部介護福祉課の担当者から市の介護医療施策の取り組みに関する説明を聞いた。話題は、認知症患者やその家族を支援する認知症初期集中支援推進事業、在宅医療・介護連携支援センター運営事業などで、恵庭市の介護認定率は道内35市の中で最も低いことも取り上げられた。
恵庭は読書のまちということもあり、タイ関係者は「文章を読むのは、デジタル機器と紙のどちらがいいのか」と質問。同課担当者は「文字を読むだけならどちらでもいいが、図書館に本を借りに行くのは外出機会の確保につながる」と答えていた。
保健省関係者によると、国内の介護を取り巻く状況は、20~30年後に現在の日本と同じになるとみられている。ピヤワットウィーラー保健局長は「タイでは高齢者を、自立、家にこもる、寝たきり―と三つの区分に分けて対応している」と言い、「視察で感じたことをタイで推進するためには、自治体の能力の強化が必要。生活の質向上よりも、社会基盤整備を重視せざるを得ないのが現状で、これからはハードだけではなく、ソフト面の整備ができれば」と語っていた。