(上)厚真・宮坂尚市朗町長 課題は帰宅困難者の次の住まい 自然災害に強いまちへ

  • 特集, 胆振東部地震1年 被災3町長インタビュー
  • 2019年9月2日

  胆振東部地震発生から6日で1年を迎える。甚大な被害を受けた厚真、安平、むかわ各町の町長にこの1年を振り返ってもらうとともに、復旧復興に向けた取り組みなどを聴いた。

  ―震災から1年を前に現状をどう受け止めているか。

   「早いようで大変な1年だった。発生当時の危機的状況から関係機関の協力により、昨年のうちに避難所を閉鎖できたのは大きな一歩。平成最後の年に大自然災害を受け、令和で復旧復興を重ねていく。時代の変わり目をしっかりと受け止め、切り開いていく決意」

  ―農地に流入した土砂の撤去は一定のめどが立った。

   「営農再開が第1目標だった。農家からすると数年かかるという不安の中だったが、農地の土砂は搬入先が決まり、大部分を撤去できた。完全ではないが、今年できなかった部分の作付けも来年はできる見通し。砂防施設を設置するなど応急的な処置もほぼ完了し、2次災害のリスクは少なくなっている。ハスカップについても来年には相当な回復を期待できる」

  ―浮き彫りになった課題、対策は。

   「帰宅困難者の次の住まいをどうするかは重い課題。方向性が決まっていない地域もある。再生に向けて丁寧に議論を重ね、仮設住宅がなくなった途端に行き先がないという事態は防ぎたい。恒久的な住まいを確保し、選択できる状況をつくることが大事。3000ヘクタールの森林被害についてはまだめどが立っておらず、再生には時間がかかる」

  ―復旧・復興計画の策定に取り掛かっている。

   「北部山間地、ルーラル地区のなりわいだけではなく、生活再建、コミュニティーの再生を詰めている状況。3段階に分けて第1期である程度方向性を示し、足りない部分を補う。単純に元の生活に戻すだけではなく、より自然災害に強い、しなやかな町を目指していく。復旧復興に向けては経済のパイを大きくすることも今後の大きなポイントとなる」

  ―防災対策の進め方について。

   「インフラ面で必要な防災、減災を推進、しなやかで強靱(きょうじん)な町をつくっていく。1年前のように被災後、孤立する場所がないようにする。できる限り複線化を図っていくのは行政の役割。災害対策を中心に町民を支援してきたが、ボランティアや行政機関からの受援体制も強化し、日常を取り戻していく。さまざまな分野のプロフェッショナルを育てていきたい。防災マスターの養成も必要になる。行政に委ねるだけではなく、命を守るための行動、仕組みを定着させる取り組みも欠かせない。町の防災力を高め、人々が移住して来られるような町にしていきたい」

過去30日間の紙面が閲覧可能です。