【胆振東部地震から1年】入居に3年の壁 むかわ町の仮設店舗営業 先行き不安、町は柔軟対応へ

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  • 2019年8月31日

  胆振東部地震で多くの住宅や店舗などが被災したむかわ町。商店主の一部は現在、町が用意した仮設店舗で営業を続けているが、入居期限が3年に区切られているため、入居者から不透明な先行きに不安の声が上がる。町は復興を進めながら各事業者と協議し、柔軟に対応する考えだが、仮設店舗を置く土地は民間から借り受けているため見通しは立っていないのが現状だ。

   「われわれの行き先がどうなるのか。復興計画に明記されず不安が募っている。どうしたらよいか分からない」。むかわ町松風の仮設店舗で、たい焼き店いっぷく堂を経営する工藤弘さん(66)は不安を隠さずに語る。

   かつての自宅兼店舗は町内中心部にあったが、地震で倒壊。4月に仮設店舗に入居し、間もなく半年がたつが、地元住民を中心に店の場所を覚えてもらえるようになったのは最近のことだ。

   無償の仮店舗は3年期限の契約だが、「商売で場所がすぐに変わるのはよくない。この場所で続けていきたいが、賃貸契約に変わるなら今から話を聞かないと準備できない」とし、他の入居者と町への要望を検討中だ。

   同じ仮設店舗で営業している白田電気商会の白田忠美さん(61)も「町にはなるべく早く答えを出してほしい」と話す。末広にあった店舗は地震で倒壊し、近く解体する予定。一時期はプレハブで営業していたが、広さが足りず仮設店舗に入居した。鵡川地区は被災した商店の解体で更地が目立ち、人口減少も進む。「小さな町で人口が減り続けると商業が成り立たなくなる」と懸念を抱く。

   同町は仮設店舗の取り扱いについて、費用を抑えるため民有地のリース契約を選択した。3年の期限で無償とし、現在は工藤さんのたい焼き店と白田さんの電気店、さらに家具店の3店舗が入居する。

   一方、厚真町は町有地に仮設店舗を設置。2022年3月までは無償だが、その後は希望に応じて賃貸で延長入居できる仕組み。安平町は民有地に建てたが、期限の3年目以降は厚真町と同じ方法で調整している。

   むかわ町産業振興課は仮設店舗の扱いについて、中小機構の補助事業を活用する上で「期限を定める必要があった」と説明する。入居者には事前に事情を伝えているものの、町の復興計画に基づきまちなか再生に取り組む考えを強調。今後の対応は「大きな視点で復興を考え、仮設店舗の入居者と協議し、柔軟に対応していきたい」と話している。

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