白老 ヒグマが住宅街出没 町や苫小牧署など警戒態勢強化

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  • 2019年8月30日
人を見ても怖がらないヒグマが白老に出没している=8月4日、白老町若草町で鎌田博氏撮影

  白老町内で6月以降、ヒグマの出没が相次いでいる問題で、最近は住宅街での目撃が増え、住民に不安が広がっている。26日は民家の近く、28日には住宅街に近いJR線路上でも見つかった。町民の生活圏内に入り込むケースが増えてきており、町や苫小牧署などが警戒態勢を強化するとともに、町民にも注意を呼び掛けている。

   町によると、ヒグマに関する通報件数は29日時点で36件。前年同期はわずかに9件で、4倍に増加している。

   当初は山や森などの周辺だったが、徐々に市街地に近い場所でも出没。26日には石山の住宅街の中で道路を横切る体長1~1・5メートルのヒグマ1頭が目撃された。近隣には小中学校が2校あるため、町教育委員会は同日、保護者に対して児童・生徒を迎えに来るよう緊急要請している。

   28日には石山周辺を通過中のJR運転士が線路を横断するヒグマ1頭を発見。連絡を受けた町教委が保護者に対し、ヒグマ出没を知らせる緊急メールを送信した。町教委は「ヒグマ出没に関する対応としては近年では異例」と語る。

   石山で生活する60代の女性は「ヒグマが近くに出てくるのではないかと心配。必要のない外出は控えている」と不安そうに話す。

   苫小牧署によると、町内では4地区に配備されている交番・駐在所がパトカーによる町内巡回を実施中。同署地域課の大平浩喜地域官は住宅街まで入り込んでいることを踏まえ、「町民が襲われる危険性もある」と指摘。白老交番の中村尚彦所長は「今年は過去にないほどの目撃情報が入っている。近隣住民に対して電話連絡や戸別訪問で注意を呼び掛けている」と話す。

   道猟友会苫小牧支部によると、町内では萩野や社台、白老、石山など広範囲にわたって出没を確認。少なくとも4~5頭はいるとみており、人慣れしたヒグマもいる可能性も指摘する。これからは冬眠に向けて食料を探す時期に入るため、生ごみの屋外保管を避けるなど被害防止の取り組みも必要となる。

   猟友会白老部会長の掘起與賜(きよし)さん(72)は「43年間の猟友会人生でここまでの多い出没は初めて」と驚き、「親離れしたヒグマが縄張りを求めて徘徊(はいかい)している」と分析する。

   町は20日に目撃情報が多い社台地区で箱わな1基を設置するなど捕獲作業も始まっているが、まだ捕獲には至っていない。生活環境課の担当者は「夜間や早朝の外出時には十分に注意してほしい」としており、ヒグマを近づけさせないよう音を出す物を身に付けるなど予防策も呼び掛けている。

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