2020年4月の民族共生象徴空間(ウポポイ)開設に合わせ、白老町がJR白老駅北側に設ける「白老駅北観光商業ゾーン」への民間活力導入が思わしくない。飲食・物販の民活区域に参入する事業者を今年春にプロポーザル(企画提案)方式で募集したが、反応はなく、7月に再募集。応募は1件あったものの、審査に落ち、用地活用の事業者はいまだ決まらないまま。町は募集条件の見直しなどを検討する考えだが、ゾーンの全体構成が整わない状況でウポポイ開業を迎えることになりそうだ。
■宙に浮く民活区域
同町若草町の駅北広場に設ける駅北観光商業ゾーンは、町のウポポイ周辺整備事業の主軸。全体面積1・5ヘクタールのうち1ヘクタールは町が整備し、白老観光協会を指定管理者にした観光情報発信拠点インフォメーションセンターを開設する。0・5ヘクタールについては民間活力導入区域として「宿泊」「飲食」「物販」用の3分野の区画を用意し、今年2~3月に事業者を募集した。
宿泊分野については1社が応募し、企画提案の審査を通じてホテル建設用地として1区画の利用が決まったものの、飲食、物販用の残り2区画については宙に浮いたままだった。このため、町は再募集を行うことに。同ゾーンに関心を示す事業者などから「1区画では狭い」といった声を受け、飲食・物販用地として2区画(計3600平方メートル)を1区画にまとめ、7月10~29日の期間で募集をかけた。
応募資格は飲食・物販のノウハウを持つ町内外の事業者で、飲食については町民も気軽に利用できる施設とし、物販は1次産業に寄与する農水産物加工品の販売などを企画提案の条件とした。
ところが、実際に応募書類を提出してきたのは町外の事業者1社のみ。再募集を前に6月下旬に開いた説明会には、複数の事業者が参加したものの、応募に直結しなかった。
さらに、1社から寄せられた企画提案について「事業計画」「地域振興」「施設計画」の項目で点数評価したが、合格点に届かず、決定に至らなかった。町が肝煎りで計画を立てた駅北観光商業ゾーンの民活導入は、思うように進んでいない状況にある。
■募集要件の見直しも
設備関連を含め約1億9000万円を投じて新築するインフォメーションセンターは7月に工事が始まり、11月末に完成予定。民間のホテルも秋までに着工し、ウポポイ開設前のオープンを目指している。今回、民活区域への飲食・物販事業者が決定していたならば、ゾーン全体の構成が整う形となったが、今後、再々募集をかけたとしても「ゾーン全体のオープンはウポポイ開設に間に合わないだろう」と町の担当者は肩を落とす。
町にとって駅北観光商業ゾーンは、年間100万人を目標に掲げるウポポイとの連携で地域経済活性化を図るシンボリックな存在として位置付けている。11月には町民の投票でゾーン全体の愛称を決め、ロゴマークも作るという力の入れようだ。
それだけに飲食・物販の民活区域に対する事業者の反応の鈍さに落胆し、「2度募集しても業者が決まらなかったことを踏まえ、募集要件を見直す必要があるかもしれない」と担当者は言う。
これまでの要件では、土地(町有地)は借地とし、土地の造成や外構工事、施設の建設の全てを事業者が担う形となっている。民活区域全体の応募件数が宿泊用地を含めてわずか2件にとどまった背景に「事業者側の負担が重いため」と見る向きもある中、町は「民活導入に向けてさまざまな角度から再検討していきたい」としている。