「あすなろ」 事業休止 日高町

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  • 2019年8月27日
虐待が日常化していたとみられるグループホームあすなろ。今は入所者や職員がいない

  認知症グループホームあすなろ(日高町)の女性施設長(55)=傷害罪で起訴済み=が入所高齢者を虐待し、傷害と保護責任者遺棄の疑いで逮捕された事件後、あすなろからすべての入所者が他の施設などに移り、事業が休止状態になっている。施設は3年前にも虐待行為があり、行政から事業改善を求められていたが虐待が再発した。専門家は「小さな変化に気付くことができる体制の構築を」と再発防止を訴える。

   施設は2013年に開所。町が旧清畠小(町清畠)の跡地を有効活用してもらう目的で利用者を公募した際、施設長の夫らが申請し、認定を受けて事業を開始した。65歳以上の認知症の町民を受け入れてきた。

   門別署によると、事件は7月3日午後4時半ごろ発生。施設長の宗京(むねきょう)みどり容疑者が80代男性の顔を手のひらで殴り、全治10日のけがをさせた疑いで、7月下旬に逮捕した。当初は「押さえ付けようとした手が当たってしまった」などと容疑を否認した。

   さらに同署は、4月5日に雨天の中、車いすの90代女性を40分間屋外に放置したとして今月14日、保護責任者遺棄の容疑で再逮捕。当時の気温は5度ほどで、宗京容疑者は「ストレスがたまっていた」と供述した。同署は「命を落としかねない行為だ」としている。

   今回の事件以外にも、体にあざがあった入所者や体育館に放置された入所者がいたことを元職員らが証言しているが、裏付ける証拠が乏しく難しい捜査が続いている。

   町は16年、施設長と職員が衣服を着用したままの入所者にシャワーを掛けるなどの虐待をしたとして改善勧告を出した。その後2年間、月1回以上、業務の改善指導と虐待の有無の監視を宗京容疑者とのやり取りや施設への訪問を通じて続けた。

   しかし、虐待は再発した。町保険年金課の井上義生課長は「認知症の方は状況を忘れたりしてうまく説明できないので、虐待の事実を認めるのが難しい」と実情を語る。

   事件後、9人の入所者があすなろを利用していたが、13日時点で全員が特別養護老人ホームや病院などの別の施設へ移った。7人の職員は全員解雇されたという。

   施設関係者などによると、宗京容疑者のワンマン体制が続いていたことや、事務を担っていた容疑者の娘と職員間で人間関係の不和などがあった。職場環境にも問題があったとみられる。

   道高齢者虐待防止・相談支援センター(札幌市)の朝倉裕次課長は、虐待が起きる原因に職員間のコミニュケーション不足があると指摘。「今回の事件でも小さな問題が常習化し、大きな問題になったとみられる。関係者が細かい変化に気付くことができるような体制の構築が大切」と話している。

   町は事件を受け、前回の改善勧告よりも重い行政処分の改善命令などを出す方針を示している。町は具体的な処分内容を9月中に固め、道との協議の上、公表する予定だ。

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