白老町若草町の書家、今村吉生(雅号=翔鳳)さん(67)の作品が、第56回国際現代書道展(国際書道協会主催)で最高賞の大賞に輝いた。受賞は、行書体で書いた空海の漢詩文集「性霊集」を原典とする法語「鵬翼睨境(ほうよくげいきょう)」。海外からの約500点を含む出品作1820点の中から選ばれた。今村さんは「たくさんの人たちからの祝福に、賞の大きさを実感している」と喜んでいる。
今村さんは30年前の37歳の時、町末広町の書家、佐藤政憲(翔雲)さん(79)に師事。佐藤さんが会長を務める書の結社「一葦(いちい)会」に入会し、本格的に書の道に進んだ。現在は同会の事務局長も務める。
同書道展には、1997年に初出品して初入選して以来、毎年出品。特選などを受賞し、2006年に会員になった。会員の評価は準大賞か大賞に限られ、その後の入賞はないまま、初めての大賞受賞となった。
今作の出品に向けては5月から5カ月間、時間を見つけては練習に励んできた。筆を変え、墨を変え、創作(書体)でも書いてみるなど多様な試みを重ね、「2×8(にはち)」の紙(約60センチ×約240センチ)に100枚ほど書いて質を高めた。肩に力を入れず、書く楽しみを味わうようにしながら筆を握り続けたという。
師の佐藤さんは同展の審査員でもあり、18日に札幌市で行われた表彰式では今村さんに直接、賞状を手渡した。受賞作について「柔らかく優しい筆致で、余白の美を生かし、躍動感もある。書は人なりと言う通りに、人柄がにじみ出ていた」と評した。
「鵬翼睨境」は、約20年前に毎日書道展参与会員の故村上碧舟さんが個展を開いた際に知り、長年心に留めていた言葉。将来の展望を見極めることを意味し、今村さんは「佐藤先生が追究、探究、好奇心の人なので、『人間性を高めなければ行き着かない書の境地がある』という思いを作品にしたためました」と語った。
一葦会は6月に結成40周年を迎え、6月4~8日には町中央公民館で「国際現代書道展 白老移動展」を開き、今村さんの大賞受賞作も展示する予定。今村さんは、町東町の高齢者学習センターで高齢者大学の学生に書を指導しており、31日から同公民館で開かれる白老町文化祭にも作品を出品する。