平成元年、苫小牧市議会は、錦町再開発商業ビル「トピア」で明け「トピア」で暮れた。優良な市有林とトピアをセットで本州大手に売り渡すという苦肉の策は、この時代の写し絵ともいえた。
■市有林売却を条件に
元号が改まって間もない2月18日、苫小牧市議会は第11回臨時会を開き、植苗の市有林を西武セゾンクループに6億5000万円で売却することを、賛成多数で可決した。ただし、経営破綻した「トピア」も一緒に買ってもらう。言い換えればゴルフ場用地として市有林を売り渡す代わりに、トピアを買ってもらう。苦渋の選択であった。
■苫東以来のお荷物
この時市長だった鳥越忠行氏は後に「トピア事業は大泉市政時代から強引に進められてきた。議会は明けても暮れてもトピアだ。西武本社へ何回足を運んだことか」と語った。
「トピア」は、大型店の進出に対して既存商店街である錦町の再開発を目的に、苫東開発を軸に30万人都市を目指す街づくりの中で昭和54年に構想された。同56年着工(地下1階、地上5階建て鉄筋コンクリート造り、延べ床面積約7800平方メートル)。市と商業者が出資した第三セクター・錦町再開発株式会社を設立して事業を進めた。しかし、経営は破綻し、29億円の負債を抱えて同63年に自己破産、営業を停止していた。
■6億円と12億円
表向き、市有林の価格は6億5000万円、トピアは12億円とされたが、実際の価値は市有林が12億円余り、トピアが6億円余り。市有林の育成に深く関わってきた人々は異を唱え、植苗町内会連合会は売却に反対したが、その声は通らなかった。
西武セゾングループはこの年の12月、トピアを再オープンさせたが、その後も営業停止と再開が繰り返され、お荷物であり続けて平成26年に解体された。
ともあれこの出来事は、地域の人々が育んだ森林を、国家プロジェクトで踊った失策の代償として、バブルの波に乗ってやってきた中央企業にゴルフ場用地として売り渡さざるを得なかったという点で、この時代を象徴するものであった。
(一耕社・新沼友啓)
《トピア概略年表》昭和61年3月オープン/同63年8月錦町再開発会社自己破産、閉館/平成元年西武セゾンが買収、12月再オープン/同6年2月営業再停止/同12年6月ビッグジョイの名で「鶴丸」を核に再々オープン/同23年7月不振により閉鎖/同26年12月ビル解体作業に着手