勤続50年のKさんが、ご勇退されました。Kさんを含め先人たちが築いたものには、想像もできないようなご苦労が含まれていると思うと「お疲れさまでした」と、私が言うのはあまりに軽い気がして、ぐっと口元に力が入り、言葉をのみ込みました。
その方は、奥さまの介護をされています。「今後は妻と二人っきりだ!」という言葉に、私はかつての父を思い出し、危機感を覚えました。2010年、若年認知症と診断された母の介護をしていた父は、私が苫小牧市へ引っ越すまで「妻と二人きり」になろうとしていました。迷惑をかけられない、妻のことは夫が何とかするものだ…と思っていたためで、私はそうではなく、いろいろな人に関わってほしいと願っていました。
なぜなら、程度にもよりますが、家族だけの介護には限界があり、困難だと私自身が感じていたからです。家族以外とのつながりをつくりたいと、家族会や集いに参加し、SNS投稿やライブ配信を行いました。父は、否定して怒り、そして割り切り、受容していきましたが、その過程で人との関わりはとても大きな役割を果たしました。「おかげさまだよなぁ」と感謝し、母との向き合い方にも変化が生まれました。
家族の課題を抱えている方は、どうか孤独にならないでほしい。そんな思いを込めてKさんと「それでは、また」と、笑顔であいさつを交わしました。支えや居場所は三つ以上あると良いと聞きます。どうか、二人きりにならないでください。
(納棺師・苫小牧)