母が1963年取得から持ち続けていた自動車運転免許証を今月返納した。83歳で、高齢者講習を合格し続けてきたが、最近は視野の範囲やその他の用件で本人が限界を感じ、昨年には乗り続けてきた軽四輪のマイカーを手放していた。聴けば、出向いた警察署で書類に必要事項を記して手続きを終わらせてきたそうだ。
道産子の母は美容師養成の専門学校へ通うため高卒後上京し、「これからは女の人が自動車を運転するべきよ」と在京の叔母の勧めで教習所へ通い、免許を取った。幼児期からその運転で出掛け、小学生当時にはバス通学した遠い小学校へ冬のアイスホッケー朝練習の際には小職と近所の仲間を乗せる車の父親たちばかりの輪番に加わり、送ってくれた。十代の頃まで母の運転には世話になった。
つい数日前には間もなく80代の知己が苫小牧を離れ、都会へ移住したと知った。記者としての小職を育ててくれた大恩人でいつも励ましてくれた。晩遅くに「まずはご報告まで」と記されたメールが届き、慌てて電話すると、数年前から計画していたことを実行したのだという。〈木の実落つ 別れの言葉 短くも〉。俳人、橋本多佳子の句。秋、惜別の事柄が前後してあり、ただただ「ありがとうございました」と思うばかりだった。(谷)