旧優生保護法に基づく強制不妊手術の被害者らへの補償法が8日の参院本会議で全会一致で可決、成立した。前文に国を主体とする謝罪を明記。手術を受けた本人に1500万円、配偶者に500万円を補償し、人工妊娠中絶の被害者には一時金200万円を支給する。公布日の3カ月後から施行する。
補償法は、旧法の規定を違憲とし、国の賠償責任を認めた7月の最高裁判決を受け、訴訟に参加していない被害者についても救済を目指す超党派議員連盟が臨時国会への提出を目指し議論を進めていた。会期が短く、提出見送りの可能性もあったが、成立にこぎ着けた。
2019年に成立した救済法は、前文で「我々」が反省とおわびをするとし、謝罪の主体を国と明記していなかった。救済法の改正となる今回の補償法では、「国会および政府は、憲法に違反する立法行為を行い、これを執行してきたことについて、深刻にその責任を認め、心から深く謝罪する」とし、国の責任を明確化した。
不妊手術を受けた本人への補償額は、最高裁判決で確定した認容額を基に決めた。配偶者については、原告側弁護団が求めた通り500万円とした。本人や配偶者が死亡した場合は遺族が請求できる。救済法で、手術を受けた本人に慰謝料として一時金320万円を支給するとした規定も残す。
旧法下で人工妊娠中絶のみを強いられた人についての司法判断は出ていないが、被害者らへのヒアリングを経て救済することを決めた。手術の回数や中絶後の出産の有無にかかわらず、慰謝料として一律200万円を支給する。
被害認定は、こども家庭庁に設置する審査会が行う。手術記録がなくても、証言などから「明らかに不合理ではなく、一応確からしいこと」が確認できれば補償する。請求を弁護士会が支援する体制も整える。請求期限は、法施行から5年。被害者への個別通知は各都道府県の運用に委ねる。
強制不妊手術や人工妊娠中絶に関する調査を国が行い、原因究明や再発防止のための措置について検証することも盛り込んだ。