日本人の6人に1人は、足の皮膚か爪に水虫がある。原因の「白癬(はくせん)菌」というカビを殺す抗真菌薬で治療可能だが、白癬菌の中には耐性を示す菌もある。この問題を研究する新座志木中央総合病院(埼玉県新座市)皮膚科の比留間淳一郎部長に現状と対策を聞いた。
▽治せない病気に?
比留間部長らは2020年と22年、それぞれ210人、288人の水虫患者の皮膚の一部を採取して耐性状況を調べた。「主要な抗真菌薬への耐性菌が約2%に認められました。低いように見えても、水虫患者は数千万人に上るため、大きな問題が潜んでいます」
その理由として、ある特定の薬が広く使われると、その薬が効く菌は死滅する半面、耐性菌は生き残ることがある。細菌やウイルスの耐性化と同じように、菌の構造が変化し、薬が結合しにくくなると考えられる。
ただし、複数の薬剤に耐性を持つ水虫菌は極めてまれなので、「まだ恐れる必要はない。普段の診療でも、薬剤耐性が原因で治療が失敗したと思われる事例は経験していません」。
しかし、多剤耐性菌による水虫が増えて各地に広がった場合、「水虫が治せない病気になる」との懸念はある。
▽適切な診断と治療を
重要なのは、正しく診断してもらうこと。「水虫のように見えてそうでないこともあるので、皮膚科の専門医を受診しましょう」
診断には、医師が患部の皮膚の表層をわずかに削り取り、顕微鏡で菌の有無を調べるなどの検査が必須だ。水虫と診断がつけば、抗真菌薬を処方されることが多い。足の皮膚ならクリームなどの塗り薬だが、使い方にこつがある。
例えば、薬を塗る範囲については「足の指の間の皮がむけている部位だけでなく、土踏まず、かかとなど足全体に塗る必要があります。症状がなくても、菌が潜んでいる可能性があるからです」と比留間部長は説明する。
患者にもよるが、通常は症状が良くなってからも、塗り薬による治療を数カ月は続ける。その後、診察を受け、治癒したかどうかを判断してもらうとよい。
(メディカルトリビューン=時事)
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