白老町若草町に住む富田英介さん(39)は11月11日、町本町の旧ツルハドラッグ跡の一角に手打ちそば店「てんぞう」を開業する。昨年末に閉店した手打ちそば店「むぎぜん」の澤田岩夫さん(78)に弟子入りし、修行を積んできた。店が軌道に乗れば、子ども食堂や子育て世帯支援の運営も視野に活動を広げる考えで「まちへの貢献につながれば」と意気込んでいる。
富田さんは2022年12月、東京から家族4人で白老に移住。住宅マーケティング関連の会社に勤めていた。北吉原の「むぎぜん」は白老で初めてできた行きつけの店で、昨年10月に澤田さんの閉店の意向を知り、「なじみの店を失いたくない」と弟子入りを志願。澤田さんも「一生懸命さと情熱の強さに打たれた」と応援を決めた。
本格的な修行に入った今年1月には会社を辞め、「そばは目配り、気配り、心配り」と語る澤田さんの薫陶を受けて、そば打ちに専念した。ところが7月、自転車で転倒して腕などを骨折。全治4カ月と診断され、一時は開業を諦めかけた。しかし、「店の味を残したい」という原点を思い出し、今は週2回ペースで北吉原の店に通って腕を磨いている。
「てんぞう」の店名は、禅宗寺院で修行僧の食事などを司る「典座(てんぞ)」にちなんだ。富田さんは東京の大学卒業後、百貨店に11年勤務したこともあり、接客の経験を生かして「心を込めて食事を届け、来てくれた人に味と居心地の良さを提供したい」と語る。澤田さんは開業後も可能な限りサポートする考えだ。
「てんぞう」は30席ほどの予定。開業に向けて支援を募るクラウドファンディングは、9月24日の開始から2週間ほどで目標額100万円の約8割が集まっている。そば打ちに懸ける富田さんは5歳の長男を育てる父親でもある。「子育て世帯の皆さんが楽になれる場にもしていきたい」と目を輝かせている。