苦笑い

  • ニュース, 夕刊時評
  • 2024年10月5日

  末は博士か大臣か―。将来の職業の選択や目標の地位が、そんなふうに言われることのなくなった時代に育った。職業に上下はない―と習い、考えて育ち、後悔はない。それでも、子どもの頃からの謎が一つある。総理大臣という地位が、遠く偉く見えたのはなぜなのだろう。

   石破茂総理大臣が誕生した。総理の名前や顔や声は新聞やテレビで朝から晩まで見られるから、子どもでもすぐに覚えられる。間もなく1週間だ。きのう午後には「すべての人に安心と安全を―」で始まる、新総理の初めての所信表明演説を聞いた。内容が分かりやすいとは思ったが、野党のヤジは激しく、演説後の評価も「内容のなさに驚いた」などとかなり厳しいものだった。今朝のテレビのニュースでも内容が薄いと批判が多い。

   個人的には、石破氏の表情の変化に慣れるまでまだ時間が必要だと感じる。とりわけ違和感が大きいのは石破総理の笑顔。石破氏は非主流派の時間が長く、時の主流派に苦言を呈し「後ろから鉄砲を撃つ」と評されることが多かったとか。鋭い目でにらむ必要があったのだろう。しかし、自民党総裁選の終盤あたりから優しい笑顔や、「ニッ」というつくり笑いも見られる。「あの笑顔見た?」。知人らとの、そんな会話に苦笑い。(水)

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