アイヌ民族文化財団は4日、人権啓発イベント「じんけん×ウポポイ2024」を白老町の民族共生象徴空間(ウポポイ)の敷地内で開いた。町社台在住の人権擁護委員でアイヌ民族にルーツを持つ田村直美さん(53)の講演をはじめ、パネル展や動画上映を行い、人権尊重の大切さを呼び掛けた。
札幌法務局と札幌人権擁護委員連合会の共催。ウポポイは差別のない社会を目指す象徴と位置付けられており、同財団は開業年の20年から同イベントを毎秋開催している。
田村さんは「語り継ぐ~今を生きるアイヌとして」の演題で講演した。初めに祖父で町社台の村主だったサリキテ(森佐代吉、1862~1924年)さんの半生を紹介。1869年の太政官布告で「北海道」になって以降、戸籍法や地券発行条例などで「名前や土地を奪われていった」と同化政策の流れを具体的に説明した。
差別は戦後も続き、家庭内に文化などの伝承が断ち切られたという。このため、田村さん自身もルーツを29歳で知り、44歳で受け入れたことを語った。「過去の歴史を知ることで、互いのルーツを受け入れ、誇りを取り戻すきっかけが生まれる」と強調。「全ての人の人権が守られるために、民族や世代、性別、国籍、障害の有無などを超え、いろんな人が支え合い、寄り添える社会であってほしい」と人権尊重の輪を広げる重要性を訴えた。
啓発パネル展は、アイヌ民族に関する内容で開催。動画は、アイヌにルーツを持つ青年の姿を通じて人権や共生について問い掛ける「アコロ青春」を上映した。