ばんえい競馬を見たことがありますか? 帯広市で開催されているばんえい競馬は、中央競馬や地方競馬のサラブレッドによる平地競走と異なり、数百キロのソリを引いてスピードとパワーを競う、世界唯一の競馬として開催されている。競走馬はサラブレッドの軽種に対して重種と呼ばれ体重は1トンを超える。馬の大半は北海道生まれだ。
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巨大な風車発電機がそびえ立つ道南の桧山管内上ノ国町。日本海を望める高地にある放牧地に、ばんえい馬の母子が草をはんでいる。放牧地は町営施設で生産者に開放し夏場は昼夜関係なく放牧する。同町でばんえい競走馬の生産を営む若狭幸憲さん(65)は「こういう起伏のある放牧地で過ごしていると、筋力的にも内臓面も丈夫になるんだ」と言う。
若狭さんはばんえいの厩務員を30年以上務め、11年前に地元に戻り生産業を始めた。ここまで26勝を挙げ重賞でも上位を争っているブラックサファイア(牡7歳)をはじめ、重賞にも出走しているグランドスターダム(牡3歳)などの活躍馬を生産している。
ばんえい競馬は毎年4月から3月までほぼ通年開催されており、昨年の2023(令和5)年度は559億6000万円を売り上げ、帯広市単独開催となった2007年以降最高、低迷期の約5倍と大きく回復した。道内の生産地は十勝や釧路が中心。売り上げを伸ばす一方で生産地は後継者不足などの問題を抱える。生産戸数の減少に伴い当然生産頭数も減っている。23年数値で主産地の北海道での生産頭数は約760頭、全国でも約930頭と、ピーク時に比べ大きく減少している。
今週末から来週にかけての盆ウイークは、全国各地の地方競馬で注目レースが組まれている。ばんえいでは11日にファン投票上位馬によるレース「ばんえいグランプリ」がある。「生産者の祭典」との副題も付き、ばんえい競馬を支える道内の生産者も紹介される。19日にはJRA所属の騎手が帯広競馬場に集まりエキシビションレースを行う「JRAジョッキーデー」が4年ぶりに行われる。体重1トンのばんばが力強くソリを引く姿は迫力あり。観戦に出掛けてみては?
(フリーライター・大滝貴由樹)