実況が欠かせない

  • 土曜の窓, 特集
  • 2024年8月3日
実況が欠かせない

  天気予報をするために、コンピューターによって作られた予想資料を確認することは大事な作業ですが、「天気予報をするために一番大事なのは実況だ」と、研修の時、先輩から特に強調して教えられました。

   「実況」とは気象の業界でよく使われる用語で、「今の天気」のことを差します。未来の天気を知るために「今の天気」が最も重要、というとピンとこないかもしれませんが、実況を確認することが、天気予報のはじめにおいて重要な意味を成してきます。

   例えば、「朝9時の予想」を「朝3時」の時点で行う場合、コンピューターによって出力された予想資料は「朝3時」より前に作成されているため、「朝3時の予想」が入っています。その予想を実際の「今の天気」と比較し、予想が当たっているか、外れているか確認する作業を、天気予報を作る前に行います。

   確認をすると、晴れている予想の場所が実際は晴れていない、雨が降っていない予想の場所が実際は雨が降っている―ということが頻繁にあります。そのような違いを考慮しながら、天気予報を組み立てるために、「実況」の確認が欠かせないのです。

   また、例えば、苫小牧の霧の予想も同様で、霧が出そうな予想資料になっているにもかかわらず、「今の天気」をレーダーや気象衛星画像などを基に確認すると、まったく霧が出ていない、ということがよくあります。そういった場合、すでに予想資料は「外れている」と考えて、その後の数時間先も霧が出そうな予想データであっても、霧は出ないと考えます。このような予報の考え方は一つの例ではありますが、一連の予想の判断のために「今の天気」を把握することは非常に重要な作業なわけです。

   慣れると、頭の中で全道各地の予想と実況の違いをすぐに整理できるようになるのですが、初めのうちは非常に時間のかかる作業です。

   さて、このような流れで気象コーナーで伝える内容を精査し、何を伝えるか決めているわけですが、放送中にも考えなければならないことは多くあります。局や番組によって考えなければならないことは異なりますが、現在出演中のNHK「おはよう北海道」の放送中には、大きく分けると三つのことを並行して行う必要があります。日々放送をこなすためには必須のスキルになるのですが、そのスキルとは?(続く)

  (気象予報士)

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