時空を超えて とまこまいの文化財(1) 【道指定有形文化財】アイヌ丸木舟および推進具 移動や運搬、漁にも

  • 特集, 苫小牧市美術博物館
  • 2024年7月22日
苫小牧市美術博物館に展示してあるアイヌ丸木舟5隻(実物)
苫小牧市美術博物館に展示してあるアイヌ丸木舟5隻(実物)

  丸木舟は1本の大きな木をくりぬいて作られる。アイヌ民族は海や川、湖を移動する交通手段として丸木舟を使い、荷物の運搬、人の移動、漁などを行った。

   1966年7月、旧勇払川右岸(現沼ノ端)から丸木舟5隻とかい、さおなどが大量の火山灰の中から発見された。1667年、樽前山の大噴火によって火山灰に覆われたことで、極めて良好な保存状態だった。科学的な調査の結果、約770年前のものと推定された。苫小牧市美術博物館学芸員の岩波連さんは「非常に美品で損傷の少ない状態」と話す。道内で約20隻が発掘され、うち一番多い9隻が苫小牧から発掘されている。

   発掘された丸木舟は、主に河川や湖沼で使われる「チプ」3隻と、主に海で使われる「イタオマチプ(板つづり舟)」2隻。2種類の違いははっきりとあり、左右の縁を見ると一目で分かる。舟にはアイヌ民族特有の文様やかい、さおには家紋や所有印が見て取れる。実物が同美術博物館に常設展示されている。

   丸木舟は今後の注目株

   1992年、新千歳空港滑走路の発掘調査で、舟着場跡が発見された。この舟着場から美々川、ウトナイ湖、勇払川を下り、太平洋までたどって漁が行われていたと推測される。旧勇払川の丸木舟出土地は、まさにこの中継地だったと考えられる。

   新たな発見は、新たな展開へつながっている。「アイヌ丸木舟について、国立アイヌ民族博物館と苫小牧市美術博物館との共同研究が始まっています」と岩波さん。苫小牧の文化財において、丸木舟は今後の注目株と言えよう。

    (通信員 山田みえこ)

        ◇

   はるか昔の人々が営んだ、生活の痕跡が各所に残されている。痕跡を文化財と呼び、正しい理解のため調査解明が日々粛々と行われている。来年、市文化財保護条例制定70周年と苫小牧市博物館開館40周年の節目を迎えるのに先立ち、苫小牧にある12の文化財をピックアップし時空を超えた先人たちの息遣いを伝える。

  【メモ】

   1967年6月22日指定

   所在地…苫小牧市美術博物館内の常設展示室

   管理者…苫小牧市教育委員会

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