「虎杖浜たらこ」は、10月から2月中旬の漁期の中でも、完熟期を迎える12月中のわずか2週間の間に取れる完熟卵を使用して、塩、水、技術、全てを磨き上げ、最高品質に加工しています。
しかし、販売当初から有名だったわけではなく、むしろ他地域で加工されたたらこと比較し、2級、3級品の評価をされていました。昭和30年代より加工業者、スタッフたちが技術と見識を深めるため、東京・築地市場に研修に行って技術を磨き、その後も虎杖浜地域全体として技術の共有と研さんに励んできました。その結果、徐々に全国各地域の市場への流通量が増え、さらには胆振水産加工業協同組合の地域団体商標登録として、全国区ブランドへと成長しました。
小粒でありながら決してべたつかず、さらさらとした食感が特徴であり、水揚げ、採卵、漬け込みまで一度も冷凍せず、たらこ本来の風味を保ったまま製造できることは、原料原産地であり加工地である虎杖浜の優位性と言えます。
加工業者ばかりが注目されがちですが、原点は紛れもなく漁師たちによる命懸けの水揚げです。真冬の極寒の深夜、暗闇の海上で水揚げし、帰港後も岸壁で数時間にも及ぶ網外し作業を行います。一日の中で最も寒い午前4時ごろ、漁港では白い息を吐き出しながら懸命に、そして黙々と作業に励む姿があり、そこに加工業者が魚の検品に訪れ、市場スタッフは漁獲量の確認に励みます。
まさに関係者全ての営みがその時、その場所に表れます。だからこそ、虎杖浜産の中でも選ばれしものしか名乗ることができない、いわば血統書付きのたらこになっています。
(蒲原水産社長・白老)