挑戦は何歳からでも

  • 土曜の窓, 特集
  • 2024年6月22日
挑戦は何歳からでも

 初夏が来て、診察室の雑談でも農作物の話題が多くなってきた。農家の人からはプロならではの苦労話などを、家庭菜園の人からはそれぞれの工夫などを聞かせてもらう。

 80代でひとり暮らしの女性は、「自分が食べる分だけ」と思っていてもつい、いろいろな品種を作りたくなってしまう、と話した。たとえばラズベリーのような果樹でも次々と新しい品種が出るので、苗のカタログを見ているうちに「よし、来年はこれだ」とやる気が湧いてくるのだという。

 「友だちに話すと、今から苗を植えて実がなるまで何年もかかるでしょ、いつまで生きられると思ってるの、とあきれられるんですよ」とその人は笑った。「でも、この実がなるまでは頑張るぞ、と思えるんです」

 素晴らしい、と私はうなずいた。人生の残り時間がどれだけあるかなんて、誰にも分からない。医学だってどんどん進んでいるから、予想よりも長生きできる可能性は十分にある。だとしたら、「もう何歳だから新しいことを始めるのはよそう」と諦めるより、「人生の残りはあと何年かなどと計算せずに、やりたいことを始めよう」とチャレンジする方が日々を明るく過ごせるに違いない。

 そういえば、と私は思い出した。いまは亡き私の両親は犬が大好きだったのだが、自分たちが70代で飼い犬が世を去ったとき、「次はもう飼わない」と決めた。「私たちはあと何年、元気で生きられるか分からないから」と言う両親に、「もし何かあったら、その先は私が面倒を見るから」と新しい犬を迎えるよう勧めたが、首を縦に振らない。

 それから先、犬のいない生活を送った両親はとても寂しそうだった。あの時、もっと「大丈夫」と励まし、たとえ何年かでも犬と暮らさせてあげればよかったな、と今でもときどき後悔している。

 もう80代だからこれはやめておこう。90代なのに何かを始めるなんておかしい。そんな考えはいますぐ手放してほしい。「思い立ったが吉日」という言葉もあるではないか。途中で何かあったとしても、きっとその先は誰かがなんとかしてくれる。それくらいのゆるい考えでよいではないか。

 そう言う私もすでに60代半ばだが、”穂別のシニア・チャレンジャー”たちに背中を押されて、これから何か新しいことに挑戦できないかな、といろいろ考えているのである。

 (むかわ町国保穂別診療所副所長、北洋大学客員教授)

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