日本が商業捕鯨を再開して間もなく5年。近年、クジラは食材としてのなじみが薄れつつあるが、ここへきて水産庁がクジラの捕獲枠を新設する方針を示したほか、大型捕鯨母船が初操業するなど、新たな動きが出てきた。
日本は古くからクジラを利用してきたが、資源保護のため1982年に国際捕鯨委員会(IWC)が商業捕鯨の一時停止を採択。これにより日本は商業捕鯨を中断し、87年から調査捕鯨を継続してきた。
商業捕鯨の再開を求めてIWCで議論を続けたが、反捕鯨国との溝は埋まらず、日本は2019年にIWCを脱退。同年7月から商業捕鯨を再開した。自国の領海と排他的経済水域(EEZ)内で、資源管理に基づいて捕獲可能量を決め、ミンククジラなど3種を捕獲している。
さらに水産庁は3種のほか、大型のナガスクジラの捕獲枠を新設し、頭の捕獲を認める方針を示しており、正式決定されれば大幅な増産になる見通し。
国内最大の鯨類生産を担う捕鯨会社、共同船舶(東京)は、捕鯨船が捕ったクジラを引き揚げて解体、加工処理などが可能な捕鯨母船「関鯨丸」(9299トン)を建造。今年5月に千葉県銚子市沖で、関鯨丸船団がニタリクジラを初捕獲した。
同社はこれまで、ニタリとイワシクジラを年間200頭以上捕獲し、魚市場や水産加工業者を通じて鯨肉を全国に流通させている。今後はナガスクジラの捕獲も予定しており、鯨肉需要の掘り起こしに意欲を燃やす。
一方、近年のクジラの国内消費量は年間約2000トン。1960年代の前半には万トン以上を消費していたため、ピーク時の100分の1以下となっている。竜田揚げやベーコンなど、かつて庶民の味だったクジラ料理を懐かしむ声も少なくなりつつある。
需要を喚起しようと、東京都内のクジラ料理専門店「鯨の胃袋」(港区)は、多くのクジラ料理を提供。週末にはクジラのステーキやにぎりずし、竜田揚げなどを3900円(税込み)で食べ放題にする格安メニューも用意し、「若者も含めて手軽にクジラの魅力を味わってほしい」(同店オーナー)とPRしている。