35年前

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  • 2024年6月15日
35年前

  14日は各地で高温が続き、全国の16地点で猛暑日。京都市では35・9度を記録した。苫小牧市の最高気温は20・1度。雨こそ降らなかったが「寒い」と言われそうな「苫小牧晴れ」の一日だった。

   35年前の1989年6月3日から4日にかけて、中国の首都北京の天安門広場に民主化を求めて集まった学生らが、戦車などによって制圧された。「天安門事件」だ。たった一人で戦車の進路をふさぎ前進を阻止する若者の姿が記憶に残る。北京では今年も軍が厳戒態勢を敷き、抗議や慰霊の動きを封じ込めたそうだ。

   事件から数年後の夏。別の取材で北京を訪れた。侵入者がたやすく登れないように表面を磨き、急角度を付けた高い壁や、毛主席の肖像はテレビで見たままの色と形だった。少し前のことなのに、事件のことを聞いても「何の話?」としか受け答えしない国民の姿に、かの国のありようを思った。広大な広場は、兵士らが決められたどこかに立てば、すぐに壮大な隊列をつくられるよう一辺1メートルほどの方形の線で縦横に区切られていた。

   北京晴れの夏は暑かった。澄んだ空に陽が沈む頃、強風と雨が突然、街路のいすを吹き飛ばして市民や観光客に襲いかかるのを見た。平和に到達する道の険しさ、遠さを30年が過ぎた今も思う。(水)

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