馬産地胆振、日高では、今春も多くのサラブレッドが産声を上げた。1年間に産まれるその数は、7000頭を超える。そんな中、生徒が馬の生産に携わっている高校がある。新ひだか町の静内農業高校で、全国の公立高校で唯一、授業の一環として競走馬の生産を行っている。今年、同校では2頭のサラブレッドが誕生した。生徒たちと一緒に成長し、早ければ2年後の2026(令和8)年に競走馬としてデビューする。
静内農業高校では、1978(昭和53)年にアラブの牝馬を所有したのを出発点に馬の生産を始めた。その後、2000年からサラブレッド生産に切り替えた。以前は1頭だけだったが、22年から2頭の牝馬を飼養している。今年は3月12日に「アツコの2024」(牝)、4月24日に「ナリタトップスターの2024」(牝)が産まれた。カタカナは母馬の名前で、数字は産まれた西暦年。競走馬として走る際の正式な馬名は今後、馬主が決まってから名付けられる。
母馬や子馬を世話する上で中心になっているのが、生産科学科馬事コースの生徒たちだ。産まれた子馬は学校構内の敷地内にある厩舎と放牧地で過ごし、誕生翌年の1歳夏に同町の北海道市場で行われる競りに上場される。出産、離乳、せりに向けての馴致(じゅんち)と、するべきことは多い。
競り会場で馬を曳(ひ)くのも、生徒の役割。出産から見てきた2年生が、最上級の3年になり、育ててきた若駒を送り出すのが通例になっている。ひと口に「馬を曳く」と述べたが、1歳馬はまだまだ子供でやんちゃな時期、慣れない人前で興奮してしまわないか、おとなしく立っていられるか、心配は尽きない。
競りでは、生徒たちの元気なあいさつ、ひたむきな姿も恒例の光景となっている。過去には2500万円の高額で取引された馬もいる。競りで250万円で取引され、ユメロマンと名付けられた馬は中央競馬で3勝を挙げた。昨年8月のせりで200万円で売却された「ナリタトップスターの2022」は今年2歳になり、地方佐賀競馬でデビューする予定。管理するのは真島元徳調教師で、息子の二也調教師補佐が静内農高卒業生という縁もあった。人も馬も、全国で活躍している。
(フリーライター・大滝貴由樹)