白老町の地域おこし協力隊員で一般社団法人シラオイプロジェクツ(通称シップス、山岸奈津子代表)は、招聘(しょうへい)した芸術家に一定期間胆振地域に滞在してもらい、地域ゆかりの作品を生み出してもらう事業「ゐ(い)ぶりのアーティスト・イン・レジデンス(ゐぶりのAIR)」を今月から始める。地域の魅力の再発見と発信が狙いで、活動は賛同する苫小牧、登別、室蘭市の有志で連携し、各市でも展開していく。
AIRは、シップスが各市町に芸術家を招いて一定期間滞在してもらい、地域の歴史や文化を学び、住民と交流する中でイメージした作品を制作してもらう事業。思い掛けない出会いが刺激となり、地域に新たな価値や魅力が生まれることを期待して発案された。
芸術家の募集は有志の草の根運動やSNSを活用して10日に始め、30日に締め切る。7月26日にマッチングイベントを開き、同月末までに各地で活動する芸術家を確定する。
受け入れは、白老町のシップスのほか、賛同する苫小牧、登別、室蘭の3市の個人・団体が担当。滞在は9月上旬には始めてもらい、作品は10月下旬をめどに仕上げてもらう。完成品は各市町を会場にしてお披露目する。翌25年2月に活動報告として記録集を作成し、冊子などでの紹介も目指す。
山岸さんは2022年に白老町に移住した。札幌国際芸術祭で広報を担当した経験を生かし、町外の芸術家の発想で地域の魅力を掘り起こすAIRを2例実施。白老町だけでなく近隣市町を巻き込んだ取り組みにし、波及効果を広げようと、移住後に知り合った町外の知人に協力を呼び掛けた。同事業は将来、胆振4市7町に広げたい考えで「自治体をまたいでAIRに取り組むプロジェクトを面白がって楽しむ視野の広い人と出会えたらうれしい」と思いを語る。
苫小牧市の有志は、多様な才能や技術を持つ人たちが集まる異業種コミュニティー「磯貝村」の代表磯貝大地さん(45)と同村所属で市大町でコワーキングスペース「トマコマイ・ハブ」を運営する佐藤準大さん(42)。「これから活躍する若い人、特に高校生の才能に光を当て、成長を応援したい」と口をそろえる。
登別市は同市地域おこし協力隊員の新村のりこさん(47)で、「移住や定住につなげ、温泉や鬼とは違う市の価値を広げたい」と意気込む。室蘭市は「ムロラン・アート・プロジェクト」代表の荒井純一さん(49)が担い、「AIRが他地域との新たな連携につながれば」と期待している。
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