遠くまで行く

  • ニュース, 夕刊時評
  • 2024年6月13日
遠くまで行く

 お茶の水駅近くのビル。講堂で文芸講演会が開かれた。大半が女性客。講師の作家は「さて、何から話すべきか」と思案した。口を開こうとする瞬間、2階最前列の端に居る女性客に気付き、声が出なくなった。妻が来ていた。しかも、目と目が合った瞬間、妻は両手を頭の上と下に持ってきて、ふざけたしぐさで「シェー!」をした。当時、赤塚不二夫さんの人気漫画の登場人物のポーズだった。

 城山三郎さんが没後に発見された手記。「そうか、もう君はいないのか」(新潮文庫)で、そんな場面が登場。妻の容子さんの天真らんまんさが分かる。やがて別れのときが来る。気骨の作家の孤独感、亡き妻への万感の思いがつづられる。

 城山さんの作品に初めて接したのは二十歳の頃。以来、数多くの作品に心を揺さぶられてきた。第5代国鉄総裁、石田禮助の生涯を描いた「粗にして野だが卑ではない」、極東軍事裁判で死刑を宣告された唯一の文官で、戦争防止に努めながら、一切の弁解をせずに逝った広田弘毅を描いた「落日燃ゆ」が特に好きだ。

 城山さんが好んだ言葉に「静かに行く者は健やかに行く 健やかに行く者は遠くまで行く」がある。容子さんが亡くなった7年後、城山さんも天国に旅立った。あれから17年の歳月が流れた。 (広)

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