白老町で民族共生象徴空間(ウポポイ)を運営するアイヌ民族文化財団は、ウポポイを中心に西胆振地域の登別市や洞爺湖町で「共生社会」について学べる冬季(12月~翌3月)探究型教育旅行プログラムを作成した。全国の高校生を対象とし、現地で環境、文化、産業などに触れ、地域住民と交流する中で、目指すべき共生の在り方を考える内容となっている。生徒用の教材「探究ワークブック」を6月中に完成させ、12月以降にプログラムの開始を目指している。
高校の学習指導要領は2022年度、従来の「総合的な学習の時間」を「総合的な探究の時間」に名称を変更。生徒が主体的に課題を設定し、複数の教科を横断する広い視点で問題を考え、解決する力を身に付ける学習をスタートさせた。
同財団はこの流れに合わせ、22年ごろから「共生社会」をテーマとする探究型教育旅行プログラムの作成を進めた。人格と個性を尊重し、支え合い、認め合う全員参加型社会と定義される「共生社会」への理解を若い世代に広げるのが狙い。
プログラムは、ウポポイの中核施設「国立アイヌ民族博物館」の展示資料や伝統芸能の観覧を通じて先住民族の精神文化を学んだり、西胆振地域で盛んな農業、漁業、酪農の現場や温泉施設などの観光地を見学したり、地元住民と交流する内容。生徒がさまざまな価値観に触れ、「共生社会」実現に向けてできることを自ら考える学習をサポートする。全国から来る高校生にとって環境の違いを実感しやすいことから、実施時期を冬季にした。
内容は昨年末までにまとめ、今年1月5~7日にウポポイなどを巡るモニターツアーを実施して検証。徳島県立脇町高校、芝浦工業大学付属中学高校(東京)、札幌日大高校の生徒や引率者21人に参加してもらい、感想を聞いて磨き上げた。
ワークブックは、国学院大学人間開発学部の田村学教授が監修。A4判、23ページの冊子となる予定で、西胆振地域の特色やアイヌ文化の特徴のほか、必要な事前・事後学習などを紹介し、共生社会への学びを支援するヒントをちりばめている。
6月中に1000部を作成し、旅行会社を通じて全国の高校に配布を進め、プログラムをアピールしていく。同財団の古関亮一誘客広報部長は「全国各地の高校生が冬場の北海道から多様な価値観を学び、自分の地域の良さを見詰め直す旅になれば」とし、東胆振地域を扱うワークブックの作成についても「今後模索していきたい」と話している。