総合バルブメーカーのキッツ(本社東京)は、厚真町が町新町に設置したビニールハウス内で、イチゴの栽培事業を手掛けている。ハウスは町学校給食センターに設けられている木質バイオマス発電所の横にあり、発電の排熱を利用して苗を育てている。7月にも収穫できる予定で、年間5トンの収穫を目指している。
同社は12年前から、長野県茅野市のバルブ製造工場内で自社の水処理装置を利用し、イチゴを栽培している。工場見学者への贈呈品にしたり従業員向けに販売したりし、2023年には外部販売を始めた。
厚真町とは18年9月の胆振東部地震後、水素事業部が関わった縁があり、町がハウスを建設してイチゴの生産に乗り出すことを知ると、事業者を公募した際に応募した。
ハウスは幅21メートル、奥行き78メートルの広さで、栽培用ベッド(長さ30メートル)を20本設置。3月から苗を植え始め、4月にかけて町民など78人が苗植えを体験した。現在は同社の従業員や委託業者などで葉かき作業などを進め、約4500株を育てている。今月上旬に受粉を行い、7月には収穫できるようにする予定。
品種は、信州大学農学部が開発した「信大BS8―9」。夏から秋にかけて収穫が可能で、糖度が15度と高く、断面にハートのような赤い芯が見えることが特徴となっている。
今後、ハウス全体で6000株を植えるようにし、年間5トンの収穫を計画している。当面は販売せず、苗植え体験をした人に1パックをプレゼントする考え。
4月から同町の地域活性化起業人として活動する同社の軍司美和さん(58)は「日本一おいしいイチゴになるよう丹精込めて育てている。これから多くの人に味わってもらえるようにしたい」と話した。