選択

  • ニュース, 夕刊時評
  • 2024年6月10日
選択

  6月は、3月期決算を終えた企業の株主総会が集中し、業績報告と同時に改選期を迎えた役員の選任も行われる。人口減少や少子高齢化、円安、物価高など経済社会が混迷を深める中、新リーダーに女性や若手を登用する企業も目立つ。最近の例では日本航空初の女性社長やユニクロ初の女性CEO誕生が知られる。

   以前、リーダーと呼ばれる人に人事の考え方を尋ねたことがある。人を動かすことについて、ある人は「トップにいるものの醍醐味(だいごみ)」と言った。将棋の駒のようにどう人を配置し、経営に生かすかを考える妙味の一つだという。「適材適所」の追求ということか。

   半面、人事に苦悩する人もいた。代表格は苫小牧市長を4期16年間務めた鳥越忠行さん。「何が嫌かというと、それ(人事)が一番嫌なんだよ」とよく本音を漏らした。一面だけで人の評価は難しく、限られたポストに誰を登用しても批判が出る。現地をよく視察し、任期後半は誰よりも行政課題に精通しているという自負もあったのかもしれない。

   6月になると以前、種まきした苗の育成カップに複数の苗がぐんぐん育つ。やがて間引きの時を迎えるのだが、元気な苗を一つに絞るのは何だか切ない。菜園のリーダーに無情さが求められる。(教)

過去30日間の紙面が閲覧可能です。