札幌在住の森迫暁夫は、自然や生命などから着想を得ながら、カラフルでかわいらしいキャラクターなど、親しみやすいイメージを作品として表現する美術家です。版画技法による平面作品をはじめ、粘土を焼成する陶芸作品なども手掛けています。森迫が多用するシルクスクリーンとは、その名の通り木枠に目地の細かいスクリーンを張り、その孔(あな)を通して版の下に置いた布などの支持体にインクを刷る版画技法の一種です。森迫はそうした技法を駆使しながら、人間とそれを取り囲む自然や動植物が変容を遂げる独自の作品世界を具現化しています。
一方、本展では版画作品のほか、粘土を焼成した工芸作品なども紹介しています。写真左下の円形の囲みで紹介している《かみちま》(2015年~)は、作者いわく「ちまっとした神様」を表す独自のキャラクターだといいます。本展では150点にも上る「かみちま」たちが集まり観覧者の目を癒やしてくれています。近年、「かみちま」は、縄文時代の土偶に着想を得た造形への展開もみせており、より神様らしい姿へと変容を遂げています。
「すべてのモノゴトは、必ず小さいモノからできている」と語る森迫は、画面や空間全体を覆い尽くすようにキャラクターを登場させます。一見するとかわいらしさが際立つ森迫の作品ですが、その世界を深く観察すると、生命の循環や森羅万象に対する祈りにも似た慈愛といった普遍的なテーマが見えてくることでしょう。
(苫小牧市美術博物館学芸員 細矢久人)