その仕組み、実は

  • 土曜の窓, 特集
  • 2024年6月1日
その仕組み、実は

  入社後、半年ほどがたち、まだラジオの解説も慣れていない中でしたが、テレビでの気象解説の研修が始まりました。放送中の現場を目の当たりにして驚いたのが、意外とあうんの呼吸で放送が成り立っている、というところが結構あるということです。

   例えば、全道の天気から予想気温に画面が切り替わる、といった場面ですが、画面の切り替えは、スタジオの外の「卓」と言われる放送の進行などの管理を行う場所で、スタッフが行っています。その切り替えタイミングは、毎日の放送で特に打ち合わせはしていない、ということが多いです。

   では、どうやっているかというと、「卓」のスタッフが、気象キャスターが話す「予想最高気温です」などといった「固定コメント」を聞いて切り替えてくれているわけです。逆に、尺が押しているときは、固定コメントを待たず、「卓」の方で強制的に画面を切り替える場合もあり、そういったときは、画面を見ながら気象キャスターの方でコメントをカットし、尺の帳尻を合わせることもあります。

   テレビでの気象解説について教わったものの、その後しばらく悩まされたことが、ラジオでの気象解説との頭の切り替えです。ラジオもテレビも大枠では同じようなことをするのは確かなのですが、話す内容は微妙に変えなければなりません。

   例えば、全道の天気を伝える場合、当たり前かもしれませんが、テレビは天気予報の画面が見えているので、視聴者の方が画面のマークを見ていることを前提にコメントを組み立てます。朝のテレビの気象情報は、出勤前の準備をしながら聞いているという方も多いと思うので、ながら聞きでも伝わるようにコメントを組み立てるよう心掛けていますが、尺の都合などで、どうしてもコメントが枠の中に収まらないこともあります。そのため、ポイントとなることを中心に話す内容を決めて、コメントに入れられない地域が出てくる場合もあります。

   一方で、ラジオの場合は、画面で予報が見えていない分、耳で聞いて道内全体のことが漏れなく伝わるようにコメントを意識します。研修を受けて間もない頃は、その切り替えがうまくできていなかったので、「テレビの解説なのにコメントがラジオっぽ過ぎる」などとよく指摘されたものです。研修は1カ月で終了し、転職後およそ7カ月で実際にテレビ出演することになりました。(続く)

  (気象予報士)

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