厚真町は、エゾシカによる2023年度の農作物の被害状況をまとめた。被害額は5844万6000円で、14年度以降の過去10年間で3番目に高い水準となった。捕獲頭数は1290頭と22年度を188頭上回り、過去10年で最多となった。農業者の損害を防ぐため、町は24年度、1300頭の捕獲を目標としているが、ハンターの高齢化などが課題となっている。
町によると、農作物の被害額は14年度が2173万9000円。その後2000万円台で推移していたが、19年度は4711万1000円、21年度は6478万2000円、22年度は最も高い8951万円となり、上昇傾向が続いていた。
捕獲頭数は、14年度が1116頭で、その後は700~800頭台で推移し、23年度に過去10年で最多の1290頭になった。町は「21年度からエゾシカ捕獲連携事業として、くくりわなを設置したことで年々捕獲数が増え、全体の捕獲も増えた」と分析している。
捕獲数が増える中、課題となっているのは、町内で活動するハンターの高齢化と埋設場所の不足。北海道猟友会苫小牧支部厚真部会と民間団体のハンター28人のうち、60歳以上が17人と全体の6割以上を占める。さらに全員が兼業で活動時間が限られるため、町鳥獣被害対策防止協議会では、16年から狩猟免許の取得を目指す人を支援し、ハンターの養成を進めている。
エゾシカの埋設は、やむ得ない場合などに認められており、深さ1・5メートルほどの穴を掘り、ヒグマなど野生動物の掘り返しを防止している。深過ぎても土壌や地下水に影響を及ぼす恐れがあり、今後、捕獲頭数が増えると、地区によって埋設場所の不足が懸念される。
町は「捕獲頭数の増加によって、ハンターの負担や処理場所不足などの課題が顕在化している。民間事業者と協議し、ジビエの活用など処理の方向性について検討したい」としている。