苫小牧広域森林組合は、胆振東部地震で被災した森林の早期再生に向け、ドローンなどのICT(情報通信技術)を活用している。農林中央金庫の「農中森力(もりぢから)基金」で「ICTを活用した被災森林復興~スマート林業Atsumaモデルの構築~」事業が2023年度の助成案件に選ばれ、森林の計測後、傾斜や土壌条件などに応じて復旧方法の区分けをするほか、データ共有システム構築の検討を進めている。
同組合によると、厚真町では地震で一般民有林3236ヘクタールが被災したが、森林再生は157ヘクタールにとどまり、復旧の遅れにより森林の荒廃が進んでいるという。復旧事業の実施には測量や現地調査で作業区域を明確にする必要があるが、人手不足もあり、全容把握に時間がかかっている。
今回の事業では、ICTを活用して新たな施業計画を作成し、森林再生事業のモデルケースとなることを目的とした。農林中央金庫の助成額は916万5000円。
今年度は同町桜丘、高丘地区の森林16・9ヘクタールで、ドローン3台による測量と空撮を行う。ICTを導入することで今までの10倍の調査作業量をこなすことができ、職員の作業負担も軽減できると見込む。測量や現地調査を実施後、区分けした地域の土壌や傾斜によって、植栽や自然に任せる天然更新などの復旧方針を決める。
地震から5年以上が経過し、腐朽の進行で利用可能な被災木が減っているほか、未整備森林の増加で土砂災害の危険性も増すなどデメリットが顕在化している。国や道、町はそれぞれが復旧事業を個別に実施しているため、同組合は情報を一元化して復旧状況の視覚化を図ることも検討する。
同組合は「森林再生は長い期間を要する。事業の解析データを基に被災森林の早期再生、持続可能な森林整備を進めたい」としている。