2018年9月の胆振東部地震発生後、砂防施設建設のためコメの作付けができなかった厚真町幌内の幌内沢地区で、今年は6年ぶりに田植えが行われている。地震による土砂崩れで生産者の命が失われ、収穫目前の田んぼに大きな被害が出たが、5年8カ月を経て国による周辺の復旧工事が完了し、苗を植える環境が整った。生産者たちはおいしいコメを消費者に届けようと、前を向いて作業に取り組む。
町本郷の高橋健太さん(31)は20日、苗を田植え機に積み、同地区の約7ヘクタールの水田で作付けを始めた。22日まで続ける予定で「この場所で久しぶりに田植えができてうれしい。今のところ作業は順調に進んでいる」と笑顔を見せる。
地震後、同地区の水田は付近の山から崩れた土砂で埋まった。周辺に砂防用の堤防を設置する国の事業で、田んぼは工事で発生した土砂の置き場となり、5年間コメを作ることができなかった。高橋さんは一時農業をやめることも考えたというが、別の場所でメロンやカボチャなどを育てながら、幌内沢での米作りの再開を待った。
今年は同地区を含め家族が所有する約18ヘクタールの水田で、ゆめぴりかやななつぼし、酒造好適米の彗星(すいせい)などを生産する予定。「品質が良く、一定量のコメを収穫できるようにしたい」と意気込む。
とまこまい広域農業協同組合(JAとまこまい広域)によると、同地区の米農家は地震前の5戸から3戸に減った。「幌内沢はもともと稲作地帯。ようやく田植えができるようになったことは大きい」とし、地震からの復興と農家の生産意欲向上につながると歓迎する。
同JAは今年、厚真町と安平町、むかわ町穂別で245戸の米農家が2322ヘクタールの田んぼに作付けし、1万2033トンの収穫を見込んでいる。