待合室

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  • 2024年5月15日
待合室

  病院、医院に定期的に通うようになって10年ほどになる。慣れれば平気と思っていたが、長い待ち時間だけはなかなか慣れない。帰宅まで3~4時間もかかることがある。「予約制にすればいいのでは―」。素人なりに考えたりもする。

   「診療所(クリニック)の舞台裏を紹介します」という中公新書ラクレ「開業医の正体」に、予約制の提案根拠をすぐ論破された。「開業医の―」は小児科開設に当たっての執筆。子どもは突然の発熱や腹痛が多い。高血圧や糖尿病など一般の大人の内科なら予約制向きだが、小児科は違う。苦しんでいる患者に「明日午後なら空いています」とは言えない。要は診察対象の年齢構成の問題。看護婦経験の長い奥さんの助言で先着方式に決めたそうだ。そうだよなと納得する。

   以前、待合室のテレビから「ボロボローン」と不気味な音。緊急地震警報だ。画面が見えない位置に座っていた人も移動して発生地を確かめていた。そうなのだ。自分たちは待合室に密閉されて現実世界の情報に飢えている。せめて、警報や災害が早く分かるようにしてほしい。「大音量の娯楽番組鑑賞会場になる待合室がつらい」という声を聞いたことがある。通販番組ばかりの待合室だってあるし。ああ、自分の名前が呼ばれない。(水)

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