東日本大震災の被災住民らの集団移転先では、コミュニティーの交流不足や高齢化が課題となっている。宮城県内では、住民や地元企業が世代を超えた交流で防災意識の向上につなげようと、餅つき大会や夏祭りなどを開催。「顔の見える関係づくり」を目指した取り組みが広がっている。
1月14日、仙台市若林区荒井東地区の飲食店前には、餅つき大会に参加するため家族連れなど200人以上が集まった。住民の交流を促そうと、地元の不動産会社「ユカリエ」が町内会などの協力を得て主催したイベントで、今年で3回目だ。
社長の永野健太さん(34)によると、同地区は震災前からの住民と震災後の集団移転で引っ越してきた人々、震災と関係なく近年移住した子育て世代の、大きく三つの層に分かれているという。餅つき大会を協賛した中荒井町内会長の庄子正信さん(73)は「若い世代は町内会に参加しない。いざという時のためにも集まるきっかけをつくりたかった」と話す。
津波により甚大な被害を受けた東松島市野蒜地区では、住民の多くが震災後に内陸の丘陵部に新たに造成された団地に集団移転した。現在は約1300人が団地に暮らし、65歳以上の割合は約35%に上る。
団地にある野蒜まちづくり協議会の会長渡辺克己さん(66)は「お茶会や地域清掃などの行事で顔の見える関係づくりをしていたがコロナ禍で中断した。再開しても若い世代が集まらない」とこぼす。
協議会は世代間の交流を深めようと、昨年8月に夏祭りを同市の震災復興伝承館で初めて開催し、震災の犠牲者の鎮魂を願う灯籠流しなどを行った。今年も開催すると話す渡辺さん。「交流が深まれば『最近あの人見ないな』と気付ける。防災という観点からも交流の機会をつくることは大切だ」と強調する。