東京電力福島第1原発の廃炉作業は、事故発生から13年を迎える現在も一進一退の状況が続いている。2023年8月には敷地内にたまる放射性物質トリチウムを含んだ処理水の海洋放出が始まった一方、「最難関」とされる溶け落ちた核燃料(デブリ)の取り出しは今年度内の実施を断念。汚染水漏えいなどのトラブルも相次いだ。
1月下旬の同原発構内。炉心溶融を起こした1~3号機を一望できる高台からは、水素爆発で骨組みがむき出しになった1号機の原子炉建屋の周囲に、鉄骨を組み始めた様子が確認できた。使用済み核燃料取り出しに向けた大型カバー設置のための作業で、25年夏には建屋全体がカバーで覆われる予定だ。
敷地内には汚染水や処理水をためるタンク1000基超が所狭しと並ぶ。東電は海洋放出で空いた敷地を、燃料デブリの取り出し作業や保管用に充てる方針だが、初年度の放出量はタンク約40基分相当にとどまる上、新たな処理水も発生し続けている。
取材に同行した東電の広報担当者は「廃炉を進展させるには、敷地が利用できる状況を作らなければならず、処理水放出は避けて通れなかった」と説明した。
放射線量の高い2号機では23年10月、原子炉格納容器につながるふたを開放。遠隔操作のロボットアームで数グラムのデブリを試験的に取り出す計画だったが、直径約60センチの通路に堆積したケーブルなどの除去作業が思うように進まず、今年度中に実施予定だったのを、今年10月までに先延ばしした。
作業ミスなどによるトラブルも起きた。汚染水の浄化処理施設で23年10月、配管の洗浄作業を行っていた作業員5人が放射性物質を含む廃液を浴び、うち2人が除染と経過観察のため一時入院。今年2月には作業員による弁の閉め忘れで設備の配管から汚染水が漏れた。
広報担当者は「廃炉作業が進んでも、福島第1原発には危険が潜んでいることを再認識させられた」と話し、再発防止に向けて取り組む姿勢を強調した。