白老町は新年度、持続可能な水産業の実現に向けて、陸上の閉鎖空間で海水を循環させ、魚を養殖する「閉鎖循環型陸上養殖試験導入事業」に着手する。産学官の連携で進め、漁業関係者の所得の安定化などを目指す。28日には町内で勉強会を開き、漁業関係者らが事業内容に理解を深めた。
同事業の背景には、海洋環境の変化に伴って主要魚種の漁獲量が減少していることがあり、水産資源のブランド化、海洋環境に左右されない生産基盤の確立、漁業関係者の所得安定を目的としている。
閉鎖循環型陸上養殖は、高度な水処理技術を活用して魚を安定生産するシステム。本格的な養殖に向けて、今年度は町内に低コスト型の簡易養殖施設を整備し、魚を試験飼育しながら、魚体、水質、ランニングコストのデータを収集、分析する。同施設で扱う魚の種類は未定。新年度予算案に事業費1429万6000円を盛り込み、町議会3月会議にかける。
勉強会は町総合保健福祉センターで開き、いぶり中央漁業協同組合などから参加した漁業関係者約20人が、元北海道栽培漁業振興公社の技術顧問、川下正己氏の講話に耳を傾けた。
川下氏はマツカワガレイを養殖する伊達市の事例を基に、閉鎖循型陸上養殖技術には海のしけや赤潮などの影響を受けない長所があることを紹介。白老で養殖する魚種の候補にホッケを挙げ「北海道を代表する魚。アニサキスの心配もなく刺し身での提供も可能。観光客の関心も高まるのでは」とした。
このほか、北海道大学水産学部から設立された企業AQSimの関係者が、データの収集と分析で、採算の合う運営システムを構築できることを語った。