2月末で白老町地域おこし協力隊員の任期を終える乾藍那さん(37)=アイヌ文化振興担当=は最後の大仕事として、アイヌ刺しゅうや木彫りを手掛ける町内の作家とサークルを紹介する冊子「白老ハポの手仕事」の英語版を作製している。出版に向け3月10日から、インターネットで資金を募るクラウドファンディング(CF)を実施する。「英語版を作ることで、国外の人にもアイヌ文化の奥深さや素晴らしさを伝えたい」と話している。
英語版は、昨年4月に完成した17個人・団体の日本語版(A4判、30ページ)に新たに6人を加え、10ページ増の計40ページ、オールカラーを予定している。女性たちが受け継いできた刺しゅうや被服、編み物などの手仕事への意欲や作品に込めた思いのほか、男性作家の木彫に懸ける情熱にも触れる。
ハポは、アイヌ語で「母」の意味。昨年12月に文化庁長官表彰を受けた高砂町の工芸作家で町伝統文化継承者、山崎シマ子さん(83)の印象から名付けた。町内で活動している女性作家の多くが、育児を一段落させた50代から本格的な研さんを積んだことへの敬意も込めている。
CFの目標金額は30万円で、募集期間は4月15日まで。プランは1000円から5万円までの8段階、約35種類。発送を一緒に手伝う体験型の支援もある。返礼品はお礼のメールや作家の作品など。資金は印刷や発送費用などに充てる。
募集締め切り後に2000部を印刷し、町内外への無料配布を始める。町内では訪日客が集まるポロトミンタラや宿泊施設などに置き、アイヌ文化に関心がある国内外の大学などの研究機関への発送も視野に入れている。
着任間もない2021年10月から、伝統技法の体験をはじめアイヌ文化に関わる人たちの話を聞く中で「アイヌ民族への計り知れない差別と苦労を知った」と語る乾さん。「白老の皆さんと苦楽を共にし、自分のことも分かってもらいたい」と、アイヌ民族の魅力や精神文化を世界に発信することに力を注いできた。「2年半、たくさん方が優しく包んでくれた」と振り返り、集大成に向け全力を挙げる。
冊子に掲載される個人・団体は次の通り。
▽日本語版にも掲載=エミナの会、エコロイコロ、河岸洋美さん、河岸麗子さん、下河ヤエさん、チシポの会、テケカラペ、のんのクラブ、フッチコラチ、山内久美子さん、やまだ民芸社、吉国幸子さん、木ぼりの吉田民芸、白老アイヌ協会事業拠点所「ノシキ」、しらおいイオル事務所「チキサニ」、白老民族芸能保存会、白老楽しく・やさしいアイヌ語教室
▽英語版に新たに掲載=能登康昭さん、濱中高子さん、平田早苗さん、丸岡元枝さん、牟田糸子さん、横山幸子さん