22日に開会した苫小牧市議会の定例会で市政方針演説に臨んだ岩倉博文市長は、今後のまちづくりで強調すべき視点の一つに「ゼロカーボンシティへの挑戦」を掲げた。2012年度から展開の二酸化炭素(CO2)を分離、回収、貯留するCCS実証試験をはじめ、国家プロジェクトが市内で実現してきた背景を踏まえ、「本市が国内の脱炭素社会構築をけん引するトップランナー」と強い自負をのぞかせた。
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昨年11月、環境省の「脱炭素先行地域」に選ばれたことも追い風にする。30年度までの電力消費に伴うCO2の実質排出量ゼロに向けて、地域特性を生かしたモデル的な提案を選定し、国が最大50億円の交付金などで支援する試みだ。
市は22年1月から申請し、落選を繰り返し、3度目でつかんだチャンス。苫小牧港・西港周辺の工業基地と勇払市街地の脱炭素化を推進し、過疎化や高齢化に悩む勇払地域の課題解決も探る計画に練り直した。
計画初年度となる24年度、当初予算案に関連事業費4000万円を計上。交付金を財源に市の持ち出しを抑える。対象エリアの企業に太陽光発電設備を大規模に取り付け、余剰電力を同市街地に安価で供給するため、調査や設計に着手。運用開始は段階的に25年度を予定している。
企業は発電量に応じた対価として地域振興費の拠出に協力。この財源で勇払市街地が抱える医療、交通、防災などの課題を解決する。各家庭で太陽光パネルや蓄電池の導入を促すため、勇払地区の住民限定で手厚い補助も先行させる。
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脱炭素関連の事業はこの他も充実させる。23年度に始めた太陽光発電の公共施設導入は、24年度も当初予算案に4300万円を盛り込み、一層の拡大を図る。
太陽光パネルを事業者が設置し、市が電気料金を支払うPPA(電力販売契約)方式で、すでに学校や学校給食共同調理場、スポーツ施設、道の駅ウトナイ湖など10カ所の工事をほぼ終えた。
24年度は4カ所ほど増設する予定。再生可能エネルギーを積極的に取り入れ、災害時の電力にも役立てるほか、発電状況を示すモニターも整備することで環境教育にも目配りする。
また、今年度に引き続き「ゼロカーボン×ゼロごみ大作戦」にも取り組む。岩倉市政の代名詞「大作戦」は、まちぐるみでテーマを絞って行政課題に臨んでおり、24年度の関連総事業費は1億9600万円。周知事業だけで680万円を充てて機運を醸成する。
温暖化対策で注目される脱炭素社会の実現に向け、市環境保全課の桜井理博課長は「行政だけでなく、企業や市民の協力が欠かせない」と強調する。市は機構改革の一環で24年度、ゼロカーボン推進室を新設する予定で「省エネや(再生エネルギーを生み出す)創エネを当たり前と感じて実践する人を増やすため、若い世代向けの活動も積極的に進めたい」と意気込む。(河村俊之)