日本人の食生活は世界でも健康的だと思われているが、カルシウムの摂取量が男女共に足りず、鉄は月経のある女性で特に不足、ナトリウム(食塩)は取り過ぎている―。そんな研究報告を、東京大のチームがまとめた。
チームは全国の1~79歳の日本人男女4450人を対象に、季節ごとに2日ずつ計8日間、食事の量を量ってもらった。さらに、統計的な手法を用い、28種類の栄養素の習慣的な摂取量を算出。国が定めた食事摂取基準などと比べて栄養素の過不足がある人の割合を調べた。
その結果、ほとんどの栄養素で、平均的な必要量を取れていない人が一定割合存在することが判明した。
中でもカルシウムの摂取量が必要量を下回る人は、男女共にどの年齢層でも多く、29~88%に達した。鉄の摂取量は、月経による出血で鉄を失う女性で不足しており、12~64歳の79~95%が必要量を下回った。
食物繊維、たんぱく質などの摂取量が、生活習慣病予防のための目標量の下限値を下回る人も目立った。一方、ナトリウムは88%以上の人が目標量の上限値を超えた。
こうした過不足の背景には、日本の食生活の特徴が存在する可能性がある。骨の健康に重要なカルシウムについて、チームの篠崎奈々・東京大特任助教(栄養疫学)は「日本人は主なカルシウム源の一つである牛乳・乳製品を取る量が少ないことが、不足者の割合の高さに結び付いた可能性があります」と指摘する。
鉄はレバーや魚介、肉、豆、野菜などさまざまな食品に含まれる。月経がある女性は必要量も多く、「不足すると妊婦や胎児に悪影響があると報告されています」。
食物繊維はさまざまな病気の予防に役立つと報告されている。摂取が少ない原因の一つには、玄米や全粒粉パンなどの精製していない主食が少ないことがあるとみられる。
たんぱく質は要介護リスクを高めるフレイル(虚弱)予防のために重視されており、特に高齢者で不足しているのは問題だ。ナトリウムが多過ぎるのは、塩やしょうゆなどの取り過ぎが一因と考えられ、高血圧などさまざまな病気のリスクを高める。