むかわ町穂別地区で発掘された全身恐竜「カムイサウルス・ジャポニクス」(通称むかわ竜)の全長約8メートルの巨大復元骨格(レプリカ)が20日、沖縄県立博物館・美術館(那覇市)で初めてお披露目された。札幌市内在住の会社役員、植田英隆さん(78)がかつて戦場となった沖縄への鎮魂、経済発展などの思いも込めて私費でレプリカを購入し、県に寄贈した。
植田さんは、終戦が迫っていた1945年4月に生まれた。母から「空襲警報が鳴ると、赤子の私は抱かれて防空壕に入った」と当時の話を聞かされて育ち、自身の新婚旅行ではひめゆりの塔などを訪れ、平和への思いを一層強くしたという。
その傍ら、学生時代から古生物へ興味を抱き、地元北海道でむかわ竜が発見されたニュースを聞いて、「レプリカを購入したい」と思っていた。昨年11月に母が満100歳の誕生日を迎えたことをきっかけにレプリカを購入し、平和への願いとともに沖縄に寄贈することを決めた。
プレゼントしたレプリカは全長8メートル、高さ3・2メートルほどで約2200万円。20日に同博物館・美術館で開かれたセレモニーで感謝状などを贈られ、植田さんは「思ってもいなかった表彰までしていただき、一生の記念になる。母親にも報告したい」と喜びを語った。同席した竹中喜之町長は、植田さんの思いと受け入れを整えた県に感謝の意を示しながら、「このご縁が沖縄と北海道を竜でつなげる交流の懸け橋として、新たにちむどんどん(胸がわくわく)する地球物語が展開されることを願う」と話した。
むかわ竜のレプリカは12月まで、同博物館・美術館のエントランスで展示され、その後、館内の特別展や離島での展示会で活用される予定。玉城デニー県知事は「このレプリカを見た子どもたちが目を輝かせ、生命進化の不思議を感じるとともに、沖縄からも恐竜の発見を―と夢を抱くに違いない。県民や観光客の皆さんの自然史への興味を一層高めるものになる」と謝辞を述べた。