世界湿地の日 厳冬期でもたくましく生きる生きものたち

  • 救護室のカルテ, 特集
  • 2024年2月16日
世界湿地の日 厳冬期でもたくましく生きる生きものたち

  2月2日は「世界湿地の日」。1971年2月2日、「特に水鳥の生息地として国際的に重要な湿地に関する条約(ラムサール条約)」が採択されたことを記念し、条約事務局が96年に定めたのが「世界湿地の日」です。この日に合わせて、毎年各国では湿地を守るためのイベントが行われています。ウトナイ湖野生鳥獣センターでも先日、記念イベント「ウトナイ湖での生きもの観察から考える、『湿地生態系の重要性』と『人と湿地のつながり』」が行われ、苫小牧市内外から多くの方々に参加いただきました。

   このイベントでは、環境省職員が講師となり、ラムサール条約登録湿地であるウトナイ湖の概要についてレクチャーを行った後、実際に参加者の皆さんと観察路を歩きました。前日に降り積もった雪の白さが青空に映える絶好のシチュエーションの下、近年人気を博しているエナガ(亜種シマエナガ)が姿を現してくれたり、雪上に残る動物の足跡などを見たりと、静けさ漂う冬景色の中でも生きものの存在をしっかりと感じることができました。中でも、参加者の皆さんの関心度が高まったのが、この季節の魚たちの観察でした。

   通常、国指定ウトナイ湖鳥獣保護区内では、鳥獣保護の観点から昆虫や魚類、植物等の採取をご遠慮いただいておりますが、今回は特別に環境省職員が魚を採取。モツゴやビリンゴなどの淡水魚を観察し、おのおのの生態や、湿地生態系の中で水生生物がどのような役割を果たしているのかなど、学ぶ機会を得ました。今回採取された淡水魚はいずれも数センチから10センチほどの個体でしたが、この小さな体でも豊かな湿地を維持するために欠かすことのできない存在であること、またこの厳冬期の冷たい水の中においても懸命に生きている生命力の強さに、改めて驚かされました。

   これまで270種以上の野鳥を記録し、ラムサール条約にも登録されているウトナイ湖。野鳥の楽園と称されることもありますが、野鳥のみならず魚類や昆虫、植物に至るまで、多くの生きものたちが関わり合ってきたからこそ、現代まで受け継がれてきた湖です。この豊かな生態系を後世まで残していかなければならないと、切実に思う一日となりました。

  (ウトナイ湖野生鳥獣保護センター・山田智子獣医師)

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