転勤

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  • 2024年2月14日
転勤

  「いい町だったでしょう」。ある町からの転勤の時、引っ越し荷物を積んだトラックの運転手さんに言われた。「いい町だった」。その町を離れる転勤者や家族から聞き続けて覚えたとか。きのうから春の気温。荷物の積み込みや見送りに来た友人や近所の人たちの、乱暴で温かい別れの言葉とともにふと思い出す。

   手元の辞典を見ると、転勤とは「官公庁、企業などの中で、勤務地が変わること」とある。簡潔過ぎる気もするが、まあそうだ。その一大事業のさなかで、当事者や家族が味わい続ける繁忙の肉体的な負担や離別の精神的な負担の大きさを別にすれば、その程度の説明になる。

   就職した後、会社員として引っ越しをしたのは5回。春が多かった。たった1年ほどで転勤が決まった時は、小学生になっていた長男から強硬に、泣いて抗議された。「父さんの会社の人はみんなこんなに転勤しているの」「いや立ち回りの上手なやつもいて~」と、つい余計な説明をしたこともある。友達と別れるのがつらかったのだろう。申し訳ない。

   転勤や進学による転居と別れの季節が近づいてきた。今年は引っ越し業界の人手不足が、昨年よりも、もっともっと深刻だという。業界では改めて異動や転勤の分散を呼び掛けているそうだ。(水)

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